2003 Fiscal Year Annual Research Report
意図せざる軍拡:公約選択における投票のパラドックス
Project/Area Number |
02J06473
|
Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
山本 元 東京工業大学, 大学院・社会理工学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 対中政策 / 大国間ゲーム / ポスト・ポスト冷戦期モデル |
Research Abstract |
本年度は、前年度に収集した対中国政策の資料を用いて米国の脅威認識の分析しつつ、学会や研究会での研究交流を通じて、ポスト冷戦期における大国(米中)間ゲームのモデル化の可能性を探った。 まず、冷戦期については、ニクソン政権以降の如何なる政権も、中国との安全保障協力による拡大均衡戦略(チャイナ・カード)を否定しておらず、冷戦終結という過渡期のブッシュ・シニア政権においても同様であったことが分かった。 しかし、ポスト冷戦期に入るとその戦略的価値が不明になり、対中政策の基本的な見直しが行われるようになった。クリントン政権は、中国が市場経済化すれば、米中の経済的相互作用が深化するので、中国ば米国の安全保障上の脅威ではなくなると考えた。その一方で、ブッシュ政権は、経済政策と安全保障政策を分けた上で、安全保障を重視した強硬的対中政策(2トラック外交)を展開してきた。一般的に、この差異は脅威認識の差によるものとされているが、しかし、ブッシュ政権の対中政策も一貫していないことが分かった。ブッシュ政権は、9・11事件を境に「潜在的脅威であるが当面は協調しなくてはならない国家である」とし、対中協調に路線変更している。これは、国際的なテロ活動やそれを可能にする兵器拡散に対処するための必要条件であったと考えられる。この理解が真ならば、米国の安全保障政策にとってより重要な脅威は、中国から国際テロ(国家から非国家主体)に変化したことになる。 この研究結果から既存の階層ゲームモデルを修正する必要があることが分かり、その方法は二つ存在すると思われる。その一つは、既存の大国間ゲームの他に、9・11事件以降の「ポスト・ポスト冷戦モデル」を設定すること。もう一つは、大国間ゲームの下位ゲームである同盟内(コスト分担)ゲームを再定式化し、そして大国間ゲーームと同盟内ゲーム間の相互作用(のさせ方)を修正することである。
|