2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J06632
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
山野 拓也 お茶の水女子大学, 理学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 非加法 / 統計力学 / 経済物理 |
Research Abstract |
本研究課題において、本年度得られた成果は、専門雑誌への発表と国際会議及び国内研究会での発表という形で公表した。本研究では、株式市場や為替相場に代表される市場ダイナミクスにおいて、エージェント間の複雑な相互作用に起因する振舞いを理解することを目指すとともに、その統計的性質を調べることから、統計力学の手法を拡張することで得られる枠組みの有用性を実証することを目指した。マーケットの時系列を解析するのに統計的複雑量なる新しい量を導入することを試みた。この目的のために、非加法的統計力学で用いられる非加法的エントロピーを用いた一つの統計的複雑量を提案した。この統計的複雑量の応用は今後の研究により行う予定であるが、いくつかの数学的な性質について調べた結果を論文公表した。その中で、特に系の複雑量というものはどのように定義したら、市場のような複雑な時系列データから有用な情報を引き出せるかという問題意識の下に、系が初めから非加法性を持つことを仮定した。このため非加法的エントロピーによる複雑量を用い、非加法的指数とShannon情報理論で用いるビット数の揺らぎの間の関係を得た。これらの結果は、2003年9月にイタリアで行われた会議においても発表した。また、前年度に引き続き、国土交通省から公開されている全国公示地価データを分析し、地価価格分布と対前年度変動率の累積分布を調べた。前年度は6年分しかデータが得られなかったが、29年分の長期のデータを入手し、それらを解析した。我が国の地価形成メカニズムを捉えるための実証研究を行っている。更に、所得不平等を議論する際に用いられる情報理論的アプローチが、非加法的エントロピーを用いた統計的複雑量の間に関係があることを見出した。特に従来の不平等尺度と非加法的エントロピーの間の関係に着目し、これを土地の価格格差の指標に応用することで従来捉えらきれなかった地域格差が明らかになったと理解している。これらの結果は、今年度の基礎物理学研究所の経済物理研究会において発表し、その研究会報告を「物性研究」、「素粒子論研究」に公表した。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] T.Yamano: "A statistical complexity measure with nonextensive entropy and quasi-multiplicativity"J.Mathematical Physics. June(未定). (2004)
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[Publications] T.Yamano: "A statistical measure of complexity with nonextensive entropy"Physica A. (未定). (2004)
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[Publications] L.Pichl, Y.Sugawara, I.Yamano: "Computer - aided software project management in stochastic environments"Proceedings of Joint Conference on Information Sciences (AIM, Cary, 2003, ISBN: 0-9707890-2-5). 1040-1043 (2003)
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[Publications] 山野 拓也: "不平等尺度の情報理論的アプローチとその土地市場への応用"物性研究、素粒子論研究. 108/4. D73-D76 (2004)
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[Publications] T.Yamano: "Distribution of the Japanese posted land price and the generalized entropy"Eur.Phys.J.B. (未定). (2004)