2004 Fiscal Year Annual Research Report
F_0F_1-ATP合成酵素のF_0モニターの1分子回転解析
Project/Area Number |
02J06699
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
上野 博史 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ATP合成酵素 / 1分子解析 / 分子モーター |
Research Abstract |
本年度は、これまで最適化してきた酵素の分析条件を微小な金コロイドと高速度カメラを用いた高時間分解能の系に応用してH^+輸送の素過程と回転との関係を分析した。 その結果、高時間分解能での酵素の回転観察に成功し、F_0F_1の回転の挙動の変化を詳細に解析することができ、これまで報告されていないその回転の性質がいくつか明らかになった。まず、ATP飽和条件でのF_0F_1の回転速度は、37℃で毎秒350回転にも達し、同じ条件で測定したF_1の回転速度(毎秒320回転)とほとんど変わりの無いものだった。この回転速度から見積もれば、F_0は毎秒3500個ものH^+を輸送することになる。さらに、回転速度のATP濃度依存性や、ATP結合やATP加水分解反応に関わる回転の挙動等はこれまでF_1単独で行われてきた実験の結果と大差ないことが示された。つまり、F_0F_1の回転の基本的な性質は、F_1と違いが無いことが明らかになった。このことから、F_0で起こるH^+輸送は律速にはならないこと、F_0での固定子/回転子間に存在する相互作用はほとんど無視できることがわかった。 また、上記に述べたように通常の条件(F_0阻害剤なし)ではF_0の機能・構造に起因する回転の挙動の変化は観察されなかったが、F_0を特異的に阻害する阻害剤tributyltin chloride(TBT-Cl)存在下の回転観察では、F_0に起因する回転速度の低下が初めて観察された。TBT-Cl存在下では、F_0F_1の回転速度は非存在下に比べて約4%にも低下した。さらに詳細な回転の解析を行ったところ、TBT-Cl存在下での回転には、低濃度ATPでの回転で観察されたATP結合待ちや、加水分解反応の遅い基質であるATPγSでの回転で観察された加水分解待ちの時に見られた回転の長い休止は観察されなかった。この結果から、TBT-ClはF_0と相互作用した結果、F_1側のATP結合や加水分解反応を単純に遅くするわけではなく、複雑な阻害様式を示すことが本研究によって示された。
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Research Products
(2 results)