2003 Fiscal Year Annual Research Report
戦争後の平和的関係樹立に向けた国家間の和解プロセス
Project/Area Number |
02J06799
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
福島 啓之 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 国際関係修復 / 三角外交 / 認知的均衡 / 複合的な三角関係 |
Research Abstract |
今年度は、二国間の交渉を取り巻く三角関係の作用という見地から、戦争後の平和的関係樹立に関する既存の理論枠組みの発展に努めた。先行研究は、二国間の交渉における利害の一致と駆け引きに焦点を当ててきた。だが、こうした国際関係修復の交渉では、国家、関係修復の対象、味方の国、の三角関係をめぐる、国家の葛藤を無視できない。それは、関係修復の対象には、味方の国と提携関係にある間接的な提携国と、味方の国、間接的な提携国とも対立する敵国があることに由来する。間接的な提携国との関係修復は、敵国を挑発する。反対に、敵国との関係修復は、味方の国と間接的な提携国の不信を招く。従来の三角関係の理論のうち、三角外交の考え方によれば、国家は味方の国と敵国を両天秤にかけ、敵国と関係修復する。一方、認知的均衡の議論は、国家が、味方の味方は味方、という認知的均衡を保つため、間接的な提携国と関係修復すると論じる。これらを包摂する新たな理論としては、国家、味方の国、敵国、間接的な提携国、の四者間における複合的な三角関係の理論が考えられる。それは、これまでの理論には適用条件があり、その条件は味方の国と敵国の関係の変動に基づくと考える。というのも、こうした変動は、国家がどの程度強く認知的均衡を味方の国との間で保ち、また三角外交を追求するかに影響するからである。複合的な三角関係の理論によれば、味方の国と敵国の関係が悪化すると、敵国に対抗して味方同士の結束を図るために認知的均衡が強く働き、国家は間接的な提携国と関係修復を進める。一方、味方の国と敵国の関係が改善されれば、三角外交を用いて国家と敵国を両天秤にかける味方の国の動きを相殺するため、国家も敵国との関係修復に努める。理論の予備的考察では、戦後日本の吉田政権による台湾との国交正常化と鳩山政権によるソ連との国交回復を比較した。その結果は、概ね理論の仮説を支持していた。
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