2004 Fiscal Year Annual Research Report
戦争後の平和的関係樹立に向けた国家間の和解プロセス
Project/Area Number |
02J06799
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
福島 啓之 青山学院大学, 国際政治経済学部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 敵と味方の間での葛藤 / 三角関係の力学 / モノによる補償 / ことばによる謝罪 |
Research Abstract |
今年度は、社会心理アプローチの観点から戦争後の平和的関係樹立を説明する包括的な理論枠組みの構築を図るとともに、埋論枠組みから導かれる仮説を検証すうため、戦後日本と東アジア主要国の関係修復を事例とする実証研究を行なった。社会心理アプローチに基づく理論枠組みは、戦争後の平和的関係樹立に関して、次のような仮説を提示する。旧敵国との関係修復を目指す国の政策決定者はまず、多国間の国際体系に働く社会的関係の力学についての認識に基づき、関係修復の候補となる国の序列化を行い、どの旧敵国と関係修復を進めるか選択する。関係修復の相手を選択すると、政策決定者は次に、モノによる補償とことばによる謝罪のいずれに重きを置いて、関係修復の意思を相手に伝えるかを選択する。いずれの説得の仕方により、相手との間に関係修復の意思の疎通が図られるかは、相手の認識枠組みによる。これらの仮説を検証するにあたっては、戦後日本と東アジア主要国の関係修復に関する米国の外交文書を収集し、一次資料として用いることにした。その解析から、仮説を支持するような形で、戦後日本は東アジア主要国との関係修復を進めたことが明らかになってきた。まず、関係修復の相手の選択に関していえば、多国間の社会的関係たみられる、敵と味方の間での葛藤の変化が関係修復を阻害せず、かつ三角関係の力学がそれを促進するような相手との間で、関係修復に進展がみられる場合が多かった。そして、相手の国が過去の損失にこだわるならば、日本の政策決定者がことばによる謝罪を重視する場合に、一方、相手の国が将来の利益を追求するならば、モノによる補償を重視する場合に、関係修復は進展する傾向が見られた。
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