2004 Fiscal Year Annual Research Report
粒状性有機物の動態に基づく河川流域レベルでの生態系管理方法の開発
Project/Area Number |
02J06871
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉村 千洋 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 河川生態系 / 流域 / 粒状有機物 / 流量変動 / 底生動物 / 細菌 / 生物分解性 / 起源推定 |
Research Abstract |
研究計画に沿い、河川における粒状性有機物の流出過程やその底生動物群集との関係を解明し、流域スケールでの河川環境管理における粒状性有機物の重要性を明らかにした。本年度の主な実績は以下の2テーマにまとめられる。なお、粒径に応じて有機物をDOM(<0.7μm)、FPOM(0.7μm-1.0mm)、CPOM(>1.0mm)に分類した。 (1)自然河川における粒状有機物の量的および質的変化 昨年度までの結果として、自然状態の河川では平水時には比較的易分解性の粒状態有機物が低濃度で下流域に輸送されるが、洪水時には土壌有機物と組成が非常に近い難分解性有機物が輸送されることが示された。そして、安定同位体比の測定と化学組成分析(熱分解GC/MS)の結果を加えることにより、混合モデルを活用してFPOMの起源推定を定量的に行った。その結果、平水時には陸上植物が、洪水時には土壌由来有機物がFPOMの主な由来となっており、陸域と水域のつながりや物質輸送におけるFPOMの重要性が示された。 (2)堆積性FPOMと底生動物群集の関係 粒状性有機物の生態学的役割を解明するために、底生動物群集構造と底生動物の餌資源である堆積性FPOMの関係を調べた。多摩川中流部での調査により、FPOMと底生動物は洪水時の河床撹乱により存在量が大幅に減少するが、その後のFPOMの堆積に伴い、底生動物の現存量が1ヶ月程度で回復することがわかった。また、堆積性FPOMの生化学的特性や底生動物の回復速度は、下水処理放流水の影響を受けることが示唆された。 これらの研究結果より、FPOMの化学特性が上流域の土地利用や河岸植生の影響を受け、また流量安定時にはFPOMの濃度(もしくは堆積量)が水生生物の群集組成を変化させることが推測された。以上の研究成果は、論文(2編)として国際学術誌に投稿される予定である。
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Research Products
(3 results)