2002 Fiscal Year Annual Research Report
マウスP19細胞およびES細胞を用いた心筋細胞分化の分子的機序の解析
Project/Area Number |
02J06883
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
門前 幸志郎 東京大学, 医学部附属病院, 特別研究員(PD)
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Keywords | 心筋細胞分化 / P19CL6 / Csx / Nkx2-5 / 転写因子 / アポトーシス / 再生医療 / 分子生物学 / 細胞生物学 |
Research Abstract |
研究者は、心筋再生治療の実現に貢献しうる当研究課題を推進するため、マウスP19細胞株を用いた以下の研究を行った。 ホメオボックス遺伝子Csx/Nkx2-5は様々な心筋遺伝子の発現を制御し、心臓の発生に重要な転写因子である。ヒトにおいてCSX/NKX2-5の遺伝子変異が様々な先天性心疾患の原因となることが報告されたが、研究者は代表的なCSX/NKX2-5変異体が心筋細胞分化にどのような影響を及ぼすかを、心筋分化のモデル細胞であるP19CL6細胞を用いて検討した。野生型のCSX/NKX2-5を恒常的に過剰発現するP19CL6細胞株を単離し、ジメチルスルフォキシド(DMSO)処理によって分化誘導したところ、元来のP19CL6細胞よりも高率に心筋細胞に分化した。一方、変異体を過剰発現させたP19CL6細胞株では、心筋細胞への分化能が抑制され、心筋遺伝子であるMEF2CおよびMLC2vのmRNAの発現やANPプロモータの活性化は減弱した。一方、分化誘導したP19CL6細胞株に対して24時間の過酸化水素処理か2週間培養液を交換しないという処置によって細胞外からのストレスを付与したところ、変異体発現株では多くの細胞が死に至ったが、野生型発現株のみは大部分が生存した。またラット胎仔心筋細胞において、CSX/NKX2-5変異体を過剰発現させると大部分の細胞にアポトーシスが観察されたが、野生型を過剰発現する細胞では10%程度の細胞でしかアポトーシスが認められなかった。これらの結果から、CSX/NKX2-5変異体が実際の心筋細胞分化に抑制的に働くこと、また細胞死がCSX/NKX2-5変異体によって引き起こされる心発生異常のメカニズムに関与することが示唆された。 以上の研究によって、Csx/Nkx2-5が心筋発生過程において心筋特異的遺伝子の発現調節だけでなく、ストレスからの細胞保護の役割も担うことが初めて示唆された。この研究成果は、Biochem Biophys Res Commun誌に発表された。
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Research Products
(1 results)