2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J06886
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上神 貴佳 東京大学, 社会科学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 政党 / 政治改革 / 政治経済学 / 計量分析 |
Research Abstract |
14年度は、研究の「土台作り」に専念した。すなわち、政党・有権者間関係のどの側面にフォーカスするか、どのようなストーリーを描くか、理論と実証双方から既存研究のサーベイを行い、問題を設定し、自らの仮説を明確化し、実証研究の対象を確定した。具体的には、(1)パズル:なぜ政治制度改革は期待されたような「政党」「政策」中心の選挙をもたらさないのか? (2)仮説:自由民主党の組織的側面に注目してparty based on personal campaign organizations (PCOs party)を概念化し、こうした組織的特徴をもたらす要因として、従来、指摘されてきたような選挙制度や政治資金制度を含む「政治制度」のみならず、組織にリソースを供給する「社会経済的基盤」の有り様が重要であるとの仮説を提示する。政策(政治的保護)を見返りとした支持(集票・献金)の提供、「政治的交換」は民主政治における基本的な政党と有権者の関係であるが、我が国の特徴は各選挙区における「マイクロレベルの政治的交換」が顕著な点である。すなわち、選挙区レベルにおいて、政治家(候補者)の個人的組織(後援会)に対し、選挙区内の中小零細企業・事業主や利益団体支部等が、個別的な政治的保護の見返りに政治的支援を行う、という構図である(これは、集権的な政党と利益団体間の経済運営をめぐるマクロレベルの政治的交換を志向する「ネオ・コーポラティズム」と対称を為すものである)。名望家秩序の崩壊した戦後の中選挙区制において、選挙区内のすみわけに従って自民党政治家が構築してきた個人的支持組織は、こうしたマイクロレベルの政治的交換を通じて培養された社会経済的基盤によっても「ロック・イン」されており、政治制度の改革のみによって変化し得るものではない。 (3)実証:我が国産業における中小企業層の厚さ(二重構造)は顕著なものがあるが、こうした特徴は大規模小売店舗法等によって保護されてきた流通業や零細兼業比率の高い農業セクターに留まらない。本研究は、比較的にも突出した規模を有する建設業に注目し、選挙区レベルにおける政治的交換の有り様を探ることにした。現段階では、衆議院北関東ブロックをケースとすべく準備作業を進めている。計量分析のためのデータベースの構築にも注力している。
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