2002 Fiscal Year Annual Research Report
地球初期生命の多様性:太古代地質体における炭素、窒素、及び硫黄同位体分布
Project/Area Number |
02J06897
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上野 雄一郎 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 初期生命 / 太古代 / 安定同位体 |
Research Abstract |
細菌化石の系統的な記載(約1000試料)を行った。その結果、約30億年前のチャート層中に含まれる球菌様の構造は900試料以上は化石と断定するに足る構造を有しないが、残りの10%以下の試料はその内部に不定形の膜構造を有し、化石化した原形質である可能性が高まった。この成果は現在、学術雑誌に投稿中である。 また、夏期に2地域での野外地質調査を行った。一つは約40億年前の地質体が露出するカナダ、アカスタ地域において、世界最古の堆積岩発見を試みた。その結果、最古の堆積岩は野外で認定出来なかったが、今後系統的に採取された試料の鏡下観察を行い、当時の生痕発見を目指す。一方、約35.20億年前の地質体が露出するオーストラリア、ピルバラ地域においても、野外調査を行い、今後分析に用いる岩石約500試料を新たに採取した。また、地質調査の結果約30億年前の海台上に堆積した遠洋浅海堆積物の認定に成功した。従って、すでに認定されている35億年前の海底熱水系、遠洋浅海堆積物、および27億年前の浅海堆積物とあわせ、当時の生物圏分布はさらに詳しく検討可能となった。 さらに、35億年前の熱水岩脈について、新たに鉱物組み合わせと流体包有物の組成を決定し、岩脈中に含まれるケロジェンが無生物的に合成された可能性を検討した。この結果、同岩脈はその形成時に鉄酸化物や、金属単体・合金等が安定に存在しなかったことを突き止めた。これらの鉱物は無生物的な有機物合成に必要な触媒鉱物であるため、それらが存在しなかったことはケロジェンの生物起源説を強く支持する。この成果は現在論文投稿中であり、一部の結果は本年公表された。また、Raman分光法により、岩脈中の水と二酸化炭素を主とする流体包有物が、微量なメタン、や硫化水素を含む事を明らかにした。今後メタンの炭素同位対比を分析し、当時のメタン生成細菌活動を検証する事を計画している。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Ueno Y.: "Ion microprobe analysis of graphite from ca. 3.8 Ga metasediments, Isua supracrustal belt, West Greenland : Relationship between metamorphism and carbon isotopic composition"Geochmica et Cosmochimica Acta. 66. 1257-1268 (2002)
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[Publications] Ueno Y.: "Early Archean (ca. 3.5 Ga) microfossils and 13C-depleted carbonaceous matter in the North Pole area, Western Australia : Field occurrence and geochemistry"Geochemistry and the Origin of Life (Nakashima et al. eds.). 203-236 (2002)