2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J06899
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 正 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 強磁場中2次元電子系 / 分数量子ホール系 / 量子モンテカルロ法 / 負符号問題 / 有限温度 |
Research Abstract |
強磁場中の2次元電子系では、電子の運動エネルギーがランダウ量子化により離散化され、各エネルギー準位(ランダウ準位)には巨視的な数の縮退が生ずる。ランダウ準位充填率が整数でないとき、多電子基底状態は電子間の相互作用を取り入れて始めて一意に定まる。分数量子ホール効果に代表されるように、この系は電子間相互作用に起因する興味深い現象が見つかって、多くの関心を集めてきた。 さて、相互作用の強い量子多体系を理論的に調べる際に、有限サイズ系に対する数値計算が重要な役割を持つ。筆者は量子モンテカルロ法の適用を強磁場中2次元電子系に対して進めてきた。量子モンテカルロ法は、これまでの標準的な手法であった数値厳密対角化法に比べてはるかに大きなサイズ(電子数)を扱うことが可能で、さらに有限温度での物理量を求めることが可能となる。しかし、いわゆる負符号問題がこの手法の安易な適用を阻んできた。筆者は負符号問題に対して一つの処方箋を考案した。負符号間題に対するアプローチにはいくつかの道が考えられているが、筆者が選んだのは負符号がでないようにモデル(電子間相互作用)を変更することである。筆者は、電子間クーロン相互作用からのずれが可能な限り小さくなるような、負符号問題のないモデルハミルトニアンを作り出すことに成功した。それにより有限温度でのエネルギーなどの静的物理量が得られるようになった。またモデルハミルトニアンがどの程度クーロン相互作用を近似するかを、数値厳密対角化を用いて調べた。その結果、両ハミルトニアンの基底状態の重なりは必ずしも大きいとはいえないが、基底状態が持つべき性質はある程度保たれていることがわかった。 量子モンテカルロ法の利点の一つは有限温度の計算ができることである。有限温度における系の振る舞いは絶対零度の場合に比べてモデルの詳細に鈍感であると考えられ、これまでにほとんど議論されてこなかった分数量子ホール系(及び強磁場中2次元電子系)の有限温度の性質が今後この手法により明らかにされると期待される。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Sei Suzuki, Tatsuya Nakajima: "Quantum Monte-Carlo method without negative-sign problem for two-dimensional electron systems under strong magnetic fields"Journal of Physical Society of Japan. Vol.73 No.5(掲載予定). (2004)
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[Publications] Sei Suzuki, Tatsuya Nakajima: "Formulation and Application of the Quantum Monte Carlo Method to Fractional Quantum Hall systems"Physica E : Low-dimensional Systems and Nanostructures. (掲載予定). (2004)