2003 Fiscal Year Annual Research Report
物の認識と心の認識の関連性―発達認知神経科学研究からの検討―
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02J06921
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
梅田 郷子 (大泉 郷子) 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 心の理論 / 脳機能画像 / fMRI / 物理的認識(素朴物理学) / 生理的認識(素朴生物学) |
Research Abstract |
本年度は,アスペルガー症候群の患者を対象に,物の認識と心の認識の関連性の認識の検討をする前段階として,健常成人(N=9)を対象とし,物の認識と心の認識の関連性を調べるための脳機能画像研究を行った.具体的には4種の日常的な物語(心的因果(心の理論)が関係する物語・物理的因果が関係する物語・生理的な因果が関係する物語・文脈がばらばらなコントロールの文章)とそれに関する問いを被験者に読んで答えてもらい,その間の脳の賦活の状態をfMRIを用いて調べた.実験に協力していただく被験者には事前に十分なインフォームドコンセントを行い,協力の意志と被験者の身体の状況を確認した上で施行した.刺激となる物語は視覚的にスクリーン上に提示され,被験者はその物語とそれに関する問いを読んで,声を出さずに頭の中で理解し,答えることを求められた.その間の脳の賦活状況を調べた結果,心的因果を思考している間の脳の主要な賦活部位と,物理的因果・生理的因果を思考している間の賦活部位は異なり,前者ではmedial frontal gyrusと両側のtemporal polesに有意な賦活が見られ,後者ではLeft middle frontal gyrusに共通の賦活が見られた.このような結果が得られたことから,心的認識特有の脳内認識メカニズムが存在する可能性が示唆されたのに対し,物理的認識および生物学的認識においては共通の脳内メカニズムが関与し,かつ領域普遍の認識システムである意味記憶の想起の能力が反映されている可能性が示唆された.
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