2002 Fiscal Year Annual Research Report
物の認識と心の認識の関連性―発達認知神経科学研究からの検討―
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02J06921
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
梅田 郷子 (大泉 郷子) 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 情動 / 幼児 / 発達 / 自己認識 / ソースモニタリング / 心的認識 / 記憶 |
Research Abstract |
アスペルガー症候群(AS)とは,自他の心的認識能力の障害を主訴とする自閉症の一形態である.その心的認識能力の障害の一部として,情動の認識障害が存在することが先行研究によって指摘されてきた.しかし,先行研究では情動を伴う他者の表情や心的状況の理解など,他者の情動の理解に焦点が当てられており,自己の主体的体験として情動を経験した際にどのような情報処理がされるかに関しては,あまり研究がなされていない. それは健常児に関しても言え,情動を伴う状況下でどのような情報処理がなされるのか,発達的に詳細に検討した研究は多くはない.そこで,まずは(1)自己の情動の認識に関する健常な発達過程を把握してから,それに基づき(2)ASの人の自己の情動認識過程を検討することが求められた. 本年度の研究の目的は,(1)の自己の情動の認識に関する健常な発達過程を検討することであり,そのために,健常児を対象に次のような実験研究を施行した.手続きとしてはまず3・4・6歳児を対象に,ぬいぐるみ探し競争を実験者と被験児の間で行った.次いで競争が終わった後に,競争中に生じた行為をそれぞれ取り上げ,その行為を行ったのは被験児自身か,それとも実験者であったかを想起させた.そのようなテストの結果を競争中に生じた情動と合わせて分析することにより,課題途上の被験児に起こった情動(例えば,ぬいぐるみを獲得してうれしい,相手にぬいぐるみを取られ悲しいといった情動)が,後にそのイベントを想起する際にどのような影響を及ぼすか,自己の行為の記憶が情動によって変容することはありうるかを検討した.その結果,特に4歳児においては結果の良し悪しによって自己の活動の記憶が変容すること,具体的には良い結果を得られた場合には他者が行った行為も「自己が行った」と自己の行為を過大評価する傾向があり,健常者の場合,情動が自他の行為の記憶を左右することが示された.
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Research Products
(1 results)