2002 Fiscal Year Annual Research Report
メキシコの国民統合と少数民族:ソノラ州ヤキ族とその組織化(1920-1940)
Project/Area Number |
02J06924
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡田 敦美 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 先住民 / 歴史 / 地方政治 / メキシコ / ヤキ / 農村 / 国民統合 / 入植者 |
Research Abstract |
当研究はメキシコの国民統合のプロセスを諸社会集団の相互関係に注目しながら明らかにすることを目的としている。ソノラ州ヤキ平野におけるヤキ族と非ヤキ族の住民という2つの社会集団の接合の様相を、(1)両者が何らかのグループや組織を媒介に協力する方向に向かっていたのかどうか、(2)その背景として支配層との関係が如何なるものだったのかを分析することで明らかにしようとした。 具体的には、1.アリゾナ州博物館文書館、2.ソノラ州立歴史文書館、3.メキシコ国立文書館の公文書を用いて1920-1940年のソノラ州における農民組織、労働組合などを中心に、ヤキ平野の住民たちが参加し、活用すると想定された組織の構成を調査した。この調査は継続途中であるが予想と異なり、ヤキ族と地域社会の住民が共同の農民組織や労働組合を形成した事実は現在未確認で、両者が共通する利益を追求するために共通する組織を編成したという仮説を立証するに至っていない。 補完的な調査としてヤキ平野の住民、ソノラの人々へインタビューを行い、彼らの言説に投影される非ヤキ族からヤキ族へ向けられた視線を分析することにより、ヤキ族とヤキ族を取り巻く住民社会の関係を検討した。非ヤキ族の住民はその多くが20世紀を通じて近隣の山間部から灌漑農地を求めて流入してきた貧しい農業移民であり、今日なお土地や水といった資源を巡って両者は反目しあっており、ヤキと共通する組織やネットワークを形成する状況にはないことがわかった。 ヤキはヤキ族自治居留地を1937年に獲得するが、そこに至る政治プロセスをソノラの支配層との関連から検討してみると、カジェスというナショナルレベルの指導者の政治基盤の中核を成したソノラの庶民層とカジェス間に楔を打つ目的でカルデナス新大統領がヤキ族の悲願であった居留地の付与を決めたという背景があったことが明らかになった。
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