2003 Fiscal Year Annual Research Report
メキシコの国民統合と少数民族:ソノラ州ヤキ族とその組織化(1920-1940)
Project/Area Number |
02J06924
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡田 敦美 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | メキシコ / ラテンアメリカ / 歴史学 / 歴史人類学 / 近代史 |
Research Abstract |
研究対象地域における諸社会集団間の複雑な現状況を勘案したうえで現地調査を見送り、メキシコシティーや米国で、公文書館での史料調査、統計資料の収集、文献調査を行った。 ソノラでは、労働者の労働組合への組織化はカナネア鉱山を含め遅く、1930年代後半にようやく「上からの」組織化がカルデナスによって実行されたが、その規模も限定的なものだった。一方、農民組織は、早いうちから(1)19世紀の自由主義期に土地を失ったソノラ南部の村落共同体の農民、(2)ヤキやマヨを軸とする先住民によって形成された。ヤキ平野の場合、米国人の土地所有者が多かった上、輸出産品の生産を含む企業的農業経営が導入されていたため、30年代前半までは最も農地改革が遅れていた。ソノラ出身の全国的な政治指導者であったカジェスやオブレゴンとつながりの深い、保守派ジョクピシオ州政権の政治基盤を切り崩すことによって、カルデナス大統領は新政権の地盤固めを目指した。その戦略として、30年代後半までに、カルデナスはアグラリスタを軸に全国で20万のデフェンサ(自衛団)を組織し、ソノラ農村部での自らの支持基盤として利用しながら、彼らをエヒード建設の中核とした。ヤキ平野でも、カルデナス政権下において、ヤキ族へ居留地と水利権を与える一方で、大農園の多くを解体してアグラリスタにエヒードを割り当てることで、農村部に強力な基盤を築いたのである。ヤキ族がメキシコ社会へ一定程度「取り込まれた」経緯は、マヨ族の場合と異なり、地域内の農民たちと同じ行動を取ることによって同化していったのではなく、地域の外から連邦政府が、ピンポイントでヤキへの手当てを決断したことに起因する。
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Research Products
(1 results)