2004 Fiscal Year Annual Research Report
メキシコの国民統合と少数民族:ソノラ州ヤキ族とその組織化(1920-1940)
Project/Area Number |
02J06924
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡田 敦美 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | メキシコ / ラテンアメリカ / 歴史学 / 歴史人類学 / 近代史 / 国家形成 |
Research Abstract |
今年度は、まず、昨年度にアメリカ合衆国(国立公文書館)で収集した史料の整理と、データベース化の作業を行った。また、メキシコシティー(メキシコ)において、資料調査を実施した。メキシコでは、出版物一般を、大学、官公庁、国会などの付属図書館(国立図書館、ダニエル・コシオ・ビジェガス図書館、大蔵省付属図書館、国立人口・統計学研究所付属図書館、国立人類学・歴史研究所図書館)や、書店で収集すると同時に、文書館(水の文書館、国立人口・統計学研究所史料館)で史料収集を行った。 研究対象となる時代のメキシコにおける国家と民衆の関係については、国家が民衆を上から取り込んだとする見解と、庶民が主体的に国家と交渉を行い、利益を引き出しながら国民国家に包摂されていったとする見解とあった。これまで収集した資料を再検討することで浮かび上がってきたのは、名もない普通の人々は、農民や労働者という職業集団なり民族集団を軸として、組織を通して行動することで国家と交渉たり、国家の取り込みの対象となっただけではなかったことである。民衆と国家との関係を大きく左右したのは、教育や反教会政策といった、文化的、精神的な問題と関連する国家政策であった。ソノラ南部の場合、先住民=ヤキの世界と、非先住民メスティソ社会の区分を決定付けたのは、まさにこの点であった。19世紀メキシコの政治的リベラリズムの伝統が深く浸透したメキシコ北部地域において、メスティソ社会が比較的抵抗なく、革新政府が地域社会に導入しようとする反教会主義を受け入れたのとは対称的に、ヤキ社会は、カルデナス連邦政府との繋がりと反教会主義をテコに、本質主義に傾斜して行ったのである。
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