2002 Fiscal Year Annual Research Report
国王独裁対軍団運動―1930年代ルーマニアにおける権威主義体制とファシズム運動のダイナミクス―
Project/Area Number |
02J06975
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤嶋 亮 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ルーマニア / 軍団運動 / 鉄衛団 / ファシズム |
Research Abstract |
なぜ他でもないルーマニアに、独伊に次ぐ強力なファシズム運動が成長しえたのか、という問題設定に基づき、<体制-運動>のダイナミクスという視角から、軍団運動と統治権力との関係、軍団運動と伝統的支配層(君主制・官僚・軍部・産業界・正教会)との関係を明らかにするのが本研究の目的である。これに対し、本年度は、ルーマニアにおいて、一次史料の調査・収集を行い、その史料に基づき、以下のことが明らかとなった。 1.内務省警察文書や、『真実』等の戦闘期の新聞の分析を通じて、軍団運動と正教会の関係に関する実証研究を進めた。その結果、1934-37年の時期の軍団の活動の中心であった「勤労キャンプ」を軸に、軍団と司祭を中心とした中下位の聖職者たち(一部の上位聖職者も含む)が密接な協力関係にあったことが明らかになった。 2.内務省警察文書や、『真実』・『正義』等の新聞の分析を通じて、1934-37年の時期における、軍団運動を中心とした右翼陣営内の動向に関する実証研究を試みた。その結果、軍団が以前に袂を分かったLANC(クーザ派)と厳しい対立を続けるとともに、新興のゴガ派やヴァイダ派とも結局提携するに至らなかったという展開と、その背景が明らかになった。 3.内務省警察文書や、司法省中央選管文書の分析を通じて、先行研究で用いられてきた断片的なデータに比べ、、軍団幹部・軍団員の社会的構成に関するデータが飛躍的に増大した。その結果、社会的構成の地域的な多様性が明らかになるとともに、これまで不明確であった末端(「巣」のレヴェル)のリーダーの社会的プロフィール(圧倒的多数の農民+教師+司祭)が明らかになった。 軍団と君主制や軍部が、実際にどのような関係にあったのかという問題は、今後の課題である。
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