2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J07066
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上野 愼也 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 古代ギリシア / アテーナイ / ポリス / 歴史叙述 / 時間感覚 / 伝承 / 弁論 / 古典期 |
Research Abstract |
本年次の研究計画は以下の通りである。 一、過去二年度に考察した弁論の真贋や弁論の技法を踏まえ、史実把握プロセス全体の再構成に取り組む。紀元前四世紀初頭のアンドキデースから、同三三〇年代のアテーナイ民主政終焉期のデーモステネースに至る弁論、同時期に亘るイソクラテースの著述と、歴史叙述との関係を考察する。 二、史実描写の歪みが持つ意味を検討しつつ、同世紀中に「過去の在り方」がどのように変容したかを議論する。 三、碑文史料の検討により、単なる文化史、精神史の枠組みを越えて、社会構成の契機に繋がる政治文化史、言説研究となるよう配慮する。 上記一、二を遂行中、年次計画の修正に迫られた。「レオークラテース告発弁論」(三百三十年代前半)で著者リュクールゴスの引証する故事は、従来の類例とは異なり上代のものが多い。上代の故事の中でも、他の弁論や史書には馴染みの薄いものを引くのである(この一事もまた発見である)。本年度の過半は、その理由と意義を歴史叙述の生成、発展と、読者層の登場に見る研究に費やした。この成果によって、一、二本来の研究の意義を高めることが出来ると考える。 三については、学説史を把握し、問題群の抽出を行うことが出来た。リュクールゴス研究を深める上で大いに役立った。 桜井万里子・橋場弦編『古代オリンピック』(岩波新書)のうち、「第一章第三節 競技とギリシア文化 オリンピックの起源をさぐる」を担当、執筆した。本研究の成果の一部を啓蒙書という形で世に問うた(但し、編輯時の制約上、謝辞を入れることは出来なかった)。
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