2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J07077
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小野 智香子 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 言語学 / イテリメン語 / チュクチ・カムチャツカ諸語 / 音韻論 / データベース / 危機言語 / ロシア / 先住少数民族 |
Research Abstract |
イテリメン語北部方言(チュクチ・カムチャツカ諸語)の話者が居住する、ロシア連邦カムチャツカ州コリャーク自治管区チギリ地区においてフィールド調査を行い、以下の成果が得られた。 1.音韻体系 イテリメン語北部方言の音韻体系を明らかにするため、特に以下の問題について詳細な音素調査を行った。 (1)両唇摩擦音と軟口蓋摩擦音を独立した音素として認めるか、またはどちらかを一つの音素の異音とみなすかを分析した結果、無声両唇軟口蓋摩擦音・有声両唇軟口蓋接近音・無声軟口蓋摩擦音が音素として認められ、成果を「イテリメン語の両唇軟口蓋音について」として発表した。 (2)イテリメン語におけるシュワ(半狭・中舌母音)がどのような位置に現れるか、また他の母音との関係について調査を行った。 (3)放出音(ejective)と非放出音の対立について、放出音から非放出音への置き換え(また、その逆)を行い、許容可能かどうかの調査を行った。 また、録音した語彙の音声資料を使用し、コンピュータによる音声付き語彙データベースを作成した。 2.テキスト イテリメン語北部方言話者による会話テキスト2編、民話テキスト10編(ロシア語対訳付き)を採録した。テキストはコンピュータに入力し、デジタルテキストコーパスを作成した。 3.音声資料 デジタルオーディオテープ(DAT)レコーダーを使用してイテリメン語北部方言の音声(語彙・会話・独話・民話)を高音質で録音し、DATテープ15本分(約47時間)の録音資料を得た。 4.映像資料 デジタルビデオカメラを使用し、イテリメン語話者2名による北部方言会話の映像(約90分)の録画資料を得た。
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[Publications] 小野 智香子: "ロシア北東部における先住少数民族の言語使用"ことばと社会. 7. 63-87 (2003)
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[Publications] 小野 智香子: "カミチャツカの自然とともに生きるイテリメン"北のことばフィールド・ノート. 119-134 (2003)
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[Publications] 小野 智香子: "イテリメン語の両唇軟口蓋音について"環北太平洋の言語. 11. 79-90 (2004)