2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J07118
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田村 克 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ノーウォーク様ウイルス / 抗ウイルス剤 / ヒストン / 中空粒子 / 胃腸炎 |
Research Abstract |
(1)ノーウォーク様ウイルスが吸着する細胞表面分子に関する研究 ノーウォーク様ウイルス(NLV)が結合する細胞表面分子を同定するために、様々な結合阻害剤を用いた結合阻害効果を調べた。実験には^<35>Sで標識したUeno virus (UEV)の中空粒子およびIntestine 407細胞株を用いた。その結果、カテキン、ヘパリン、スラミン、プロタミン硫酸、およびポリリジンで顕著な阻害効果が観察された。以上の結果から、^<35>S-UEVが細胞表面のグリコサミノグリカンと結合することが推測された。 そこで、グリコサミノグリカンであるヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、およびヒアルロン酸を用いて^<35>S-UEVの結合阻害効果を調べた。その結果、ヒアルロン酸以外の3種類のグリコサミノグリカンで顕著な結合阻害効果が認められた。そこで、Intestine 407におけるUEV結合性細胞表面分子を特定するために、ヘパリナーゼI、III、およびコンドロイチナーゼABCでそれぞれ細胞表面を処理し、^<35>S-UEVの吸着を観察した。その結果、ヘパリナーゼIおよびIIIで処理した場合のみ濃度依存的に顕著な結合阻害効果が認められた。 以上の結果から、細胞表面のヘパラン硫酸が特異的にNLVの結合分子として働くことが示された。 (2)ノーウォーク様ウイルス結合性35kDaタンパク質に関する研究 Virus Overlay Protein-Binding Assay (VOPBA)によって検出された、NLVが結合する35kDaタンパク質を核から抽出し、アミノ酸配列を解析した。その結果SGVSLAALKという配列が得られ、抗ヒストンH1モノクローナル抗体との反応も確認して、この分子がヒストンH1であることが明らかになった。細胞内でのNLVおよびヒストンH1の相互作用を検証するために、まずはそれぞれの細胞内局在を調べた。その結果、UEVのcapsid protein (CP)は細胞質に、ヒストンH1は核内と細胞質両方に局在し、両者が細胞質で相互作用している可能性が示唆された。しかし、免疫沈降を行ってみたが、現段階では両者の結合は確認できなかった。 以上の結果から、細胞内でのNLVとヒストンH1との相互作用は、何らかの理由で阻害されているか、または細胞分裂周期のある特別な時期においてのみ相互作用しているということが推測される。
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