2002 Fiscal Year Annual Research Report
欧州における直接支払制度に関する比較制度分析:費用有効性と農地市場に及ぼす影響
Project/Area Number |
02J07123
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松田 裕子 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | EU / ドイツ / 共通農業政策(CAP) / 直接支払制度 / モジュレーション / CAP改革 |
Research Abstract |
EUでは,Agenda2000に基づくCAP改革により,直接支払のモジュレーション(Modulation)が任意の政策として導入が可能となり,経営の労働力や直接支払の受給額に応じて支払額を逓減させることが可能となった.ドイツは,農業危機と呼ばれる狂牛病や有機農産物スキャンダルに起因した国内農業の混乱を背景として,さらに東西ドイツの経営規模及び経済発展水準の格差を考慮し,これまでモジュレーションの導入については反対してきた. しかし,2002年7月にAgenda2000以降のCAPの最初の中間見直しが,その後,2003年1月に再び,新しい中間見直しが提出されると,ドイツでもモジュレーションの採用方法が活発に議論されるようになり,2003年1月からモジュレーションを導入することとなった.注目すべきは,ドイツにおけるモジュレーションが,国内事情を勘案して,経営に与える影響をミニマルに抑えることを課題として構築されていることであり,EU提案によるモジュレーションのインパクトの相違を分析することは非常に興味深い研究テーマとなりうる. 今年度の科研費の成果として,CAPの中間見直し,ドイツにおける直接支払制度をめぐる議論,並びに最大のホットイシューであるモジュレーションの政策効果のシミュレーション(モジュレーションがあった場合となかった場合の比較,経営タイプに応じた直接支払の受給額の変化に関するシミュレーション,ドイツ国内の州間比較等)について研究会で報告を行うとともに,モジュレーションの結果としての直接支払の農家間の分配上の変化に関する論文を翻訳し,その解題もあわせて執筆した.
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