2003 Fiscal Year Annual Research Report
医療をめぐる人々―病者、医師、医療関係職種―の関係性についての視座
Project/Area Number |
02J07131
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
細田 満和子 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 医療社会学 / チーム医療 / 医療倫理 / 専門職論 / 健康と病いの社会学 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度からの医療従事者や患者へのフィールドワークを継続しつつ、「チーム医療」や「病いの経験」といったテーマに沿ってデータ分析を進め、その成果を雑誌論文や書籍として発表してきた。 まず、「チーム医療」というテーマについては、これを医療従事者同士の関係性を示す言葉として捉え、医療現場の実践においてどのように作用しているのかを検証した。「チーム医療」に関する諸言説をもとに、「チーム医療」の概念を構成する諸要素を抽出し、「専門性志向」、「患者志向」、「職種構成志向」、「協働志向」と名づけ、それら要素同士の関係性を考察することで、4つの要素が互いに緊張関係にあることを示し、「チーム医療」の構成要素そのものが「チーム医療」を困難にしているという逆説を、当事者の諸実践から解明した。そして、「チーム医療」への期待とその必要性を、医療従事者と患者の視点から指摘し、実際の「チーム医療」の諸実践を紹介しながら、実現のための条件を提示した。 また、医療に対する患者の視座を検証する「病いの経験」というテーマでは、40代から60代のいわゆる働き盛りにあると自他共に認識されている中年期というライフステージにおいて、脳卒中を発症し片麻痺や失語症などの障害を持つようになった人々が、その後の生を生き抜くという経験を、医療従事者や家族や同病者などの他者との相互行為(=「出会い」と概念化)による主体の変容という観点から描き出した。病いや障害という突然身体に降りかかる危機的な状況を、当事者である主体の変容の契機と捉え、その状況の中での主体の立ち上がり方、さらにそこでの相互行為過程が個人としての主体だけでなく他者(社会)の変容へと接続される可能性を示唆することを議論の射程とした。
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[Publications] 細田 満和子: "チーム医療の見方/見られ方"ターミナルケア. 13巻・4号. 253-256 (2003)
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[Publications] 細田 満和子: "チーム医療の神話と構造"ナーシング・トゥデイ. 19巻・1号. 20-28 (2004)
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[Publications] 細田 満和子: "対象としての「病い」"ラポール. 21号. 7 (2003)
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[Publications] 細田 満和子: "「病む」ということ-自明性の崩壊"ラポール. 22号. 7 (2004)
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[Publications] 細田 満和子: "「チーム医療」の理念と現実-看護に生かす医療社会学からのアプローチ"日本看護協会出版会. 173 (2003)
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[Publications] 丸山 マサ美編, 細田 満和子: "医療倫理学 第12章 患者を支えるという視点から"中央法規出版(印刷中). (2004)