2004 Fiscal Year Annual Research Report
2次イオン質量分析計を用いた始源惑星物質の硫黄同位体分析
Project/Area Number |
02J07160
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
矢田 達 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 2次イオン質量分析計 / 酸素同位体 / 宇宙塵 / 先駆太陽粒子 / 原始太陽系 / 硫黄同位体 |
Research Abstract |
始源物質の硫黄同位体分析を進める上で、硫黄と同族である酸素同位体分析を、2次イオン質量分析計を用いて南極宇宙塵試料について同時に進めていた所、私はこれまでに報告されている固体惑星物質では最大の質量数17の酸素の正の異常を示す宇宙塵を発見したほか、宇宙塵が隕石に比べて非常に広範な酸素同位体組成分布を示すことを明らかにした。発見された17酸素の正の異常の原因としては、非常に大きな17酸素の正の異常を示す先駆太陽粒子を含む宇宙塵か、相対的に17酸素に富んでいたと考えられる原始太陽系星雲のガス成分と同位体置換を行った母天体が考えられる。また、広範な酸素同位体比分布については、宇宙塵が隕石に比べてより多彩な母天体より物質が供給されていることに加え、大気圏突入時の蒸発の条件が個々に異なることに起因する、同位体分別の違いが原因となったと考えられる。この研究成果を国際学術誌に投稿、現在査読中である。 また、私は前年度12月より移った米国ワシントン大宇宙科学研究室にて、ナノ領域の同位体分析が可能な2次イオン質量分析計を用いて炭素・酸素同位体分析を行い、南極宇宙塵中に先駆太陽粒子を探索した。その結果、6個の先駆太陽珪酸塩粒子を南極宇宙塵中からは世界で初めて発見した。その内、3個は46億年以前に存在した、低質量の赤色巨星および漸次巨星分枝起源、2個は重元素に富む漸次巨星分枝もしくはII型超新星起源、残りの一つについては起源が不明だった。また、先駆太陽珪酸塩の存在度の高い宇宙塵については、従来南極宇宙塵について推定されていた炭素質コンドライト母天体起源ではなく、成層圏宇宙塵に見られる彗星起源であることが示唆される。この成果について2回の国際学会で随時発表を行い、現在、米サイエンス誌に投稿準備中である。
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Research Products
(2 results)