2003 Fiscal Year Annual Research Report
メソポタミア宗教文学と古代イスラエル宗教文学における個人の嘆きの祈りの比較研究
Project/Area Number |
02J07174
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高井 啓介 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | シュメール文学 / アッカド文学 / 個人の嘆きの祈り / 文脈的アプローチ / 詩篇 / 知恵文学 / 罪と苦しみ / 書簡文学 |
Research Abstract |
旧約詩篇の「個人の嘆きの祈り」ジャンルをシュメール語アッカド語で書かれた楔形文字資料の同種のジャンル(とくに手紙形式の祈りであるレター・プレーヤー)と比較することにより,旧約における当該ジャンルの受容成立史を解明することが本研究の目的であるが,昨年度その比較の方法論である「文脈的アプローチ」の有効性が確認されたことを受けて,本年度は,以下の点に集中して研究を実施した。 1.「手紙」というメディアが「祈り」の伝達に転用された文学的及び宗教的背景を明らかにするため,シュメール語及びアッカド語それぞれのアーカイバル及び文学的な書簡の歴史的展開を分析したが,とくにその宛名部分の文学形式の発展の分析によって,日常的なコミュニケーションの手段としての手紙が祈りへと儀礼的に転用されたことに対する解明が容易になることが確認されたため,この点に関して,日本宗教学会第62回学術大会において口頭発表を行い,その要旨を学会誌「宗教研究」学術大会紀要特集号にまとめた。 2.苦しみからの救済を神に懇願するレター・プレーヤーというシュメール・アッカドの文学ジャンルにおいて,苦しみの背後に「罪」を想定する有り様に注目したうえで,「罪の認知」と「知られざる罪の主張」という対抗軸をその基底に見出した。そして,その両軸の系譜をレター・プレーヤー以降の「嘆きの祈り」ジャンルの発展においても跡付けることが可能になり,旧約の「嘆きの祈り」における同様のテーマとの比較に向けての準備が整ったため,この点に関して,日本聖書学研究所の12月度例会において口頭発表を行った。その成果は来年度以降に論文として発表する予定である。 また,外国旅費を使用することにより本年度も米国イェール大学中近東言語文化学科付属のバビロニアン・コレクションにおいて所蔵の楔形粘土板一次資料を直接参考することが許されたことを付け加えておく。
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Research Products
(1 results)