2003 Fiscal Year Annual Research Report
反応拡散系から生じる変分問題およびその特異極限問題による安定な微細構造の解明
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02J07223
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大下 承民 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 反応拡散方程式 / 界面ダイナミックス / 微細構造 |
Research Abstract |
私は,非局所項をもった変分問題を考察し,その最小エネルギー解の微細幾何学的構造について研究を行った.この変分問題は,FitzHugh-Nagumo方程式の界面ダイナミクスおよび高分子共重合体のミクロスケールの相分離現象の数理モデルと関連している. FitzHugh-Nagumo方程式は,神経膜興奮のモデルを簡約して得られた,双安定な非線形項をもつ反応拡散方程式系であり,あるパラメーターの範囲では,Turing不安定性と呼ばれる一様定常解の不安定化が生じ,2つの安定相へ分離したパターンが現れる.反応拡散方程式の一種であるFitzHugh-Nagumo方程式は,非局所項をもった変分問題を考察することにより,安定定常解が構成できる.それらはあるパラメーターが小さいとき,曲面によって分離されたパターンで近似できる.なかでもその分離パターンが小さな波長で激しく振動していく場合に,変分法の特異極限によるアプローチにより,縞および水玉模様の微細構造の研究をおこなった.空間2次元においては,直線構造の並列配置と円構造の正六角形配置が,実験と数値シミュレーションの両方で観測される.空間1次元の周期解から得られる縞模様および空間2次元における水玉状周期解を構成し,最小エネルギーの上からの評価とその微細構造の単位周期の長さに解析的表現を与えた.また,それら縞と水玉の幾何学的構造に対するエネルギーのパラメーター依存性を考察した.水玉構造の各周期配置に対するエネルギーを解析的に比較するには,縞-水玉間のエネルギー比較より高次の補正項の計算が必要であった.それを,複素関数の無限積展開で表し,その解析的表現を利用して,水玉構造の中で,正六角形構造が最小エネルギー密度を与えることを示した.
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 大下 承民: "FitzHugh-Nagumo方程式に現れる微細パターンについて"京都大学数理解析研究所講究録. 発表予定.
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[Publications] Yoshihito Oshita: "Stable stationary Patterns and Interfaces arising in Reaction-Diffusion Systems"SIAM J.Applied Math.. 発表予定.
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[Publications] 大下 承民: "Applications of Modular Functions to Periodic Dotted Interfacial Patterns"Proceedings of New Perspectives of Nonlinear Partial Differential Equations (Ryukoku University). 発表予定.