2004 Fiscal Year Annual Research Report
反応拡散系から生じる変分問題およびその特異極限問題による安定な微細構造の解明
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02J07223
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大下 承民 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 反応拡散方程式 / 界面ダイナミックス / 微細構造 |
Research Abstract |
私は,クーロン型遠距離相互作用をもった変分問題を考察し,その最小エネルギー解の微細幾何学的構造について研究を行った.この変分問題は,FitzHugh-Nagumo方程式の微細構造パターンや高分子共重合体のミクロスケールの相分離現象などの数理モデルとして現れる. FitzHugh-Nagumo方程式は,拡散係数が大きく違う場合には,シャープな界面により分けられた相領域(ある変数がそれぞれ定数であるような領域)をもったパターンを形成する.ある条件下では,この相領域が複雑に入り組んだ微細な構造をもつ.変分法を用いたアプローチにより,この微細構造の研究を進めた. 空間1次元の場合,いろいろな領域の長さに対して,global minimizerの一意性と周期性を完全に示した.それにより,ロシアの物理学者によって形式的な計算から予想されていた微細構造の特徴的スケールが厳密にわかった. 空間2次元においては,実験や数値シミュレーションで無数の水玉状の界面をもつ微細な周期構造が頻繁に現れることが以前から知られていた. 斑点模様は基本周期であるセルで分類できる.そのセルは2重周期構造をもったもの(例えば,正方形セルや六角形セルなど)と,2重周期構造には属さない正三角形セルがある.セルの形を変形したときのエネルギー密度を計算し,その最小値は正六角形セルで達成されることがはじめて解析的にわかった.さらに,縞模様と斑点模様のエネルギーの比較をした.その結果,あるパラメーター範囲で,縞模様より斑点模様の方が小さいエネルギーをもつことが示され,斑点模様が頻繁に現れることの理論的裏付けを与えることができた.
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Research Products
(5 results)