2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J07271
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
成田 宏秋 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | Sp(1,q)上の保型形式 / フーリエ展開 / ヘッケ作用素の跡公式 / テータ関数 / ケッヒャー原理 |
Research Abstract |
今年度掲げたテーマは符号(1,q)のシンプレクティック群Sp(1,q)上の保型形式の整数論の研究であった。具体的にはフーリエ展開の理論の構成、及び保型形式の空間に作用するヘッケ作用素の跡公式の明示的表示であった。今年度はこれら2つのテーマを嘗て立教大の荒川氏が扱ったある特別な離散系列表現に属する保型形式について考えることにした。まず後者の跡公式についてだが、いきなりqが一般の場合で考えるのは難しいのでq=1の場合から考えようとしたのだが、残念ながら研究の進展は認められなかった。この研究については今のところ来年度以降に持ち越す予定である。一方前者については大きな研究成果が認められかつ興味深い結果を得ることができた。この保型形式のフーリエ展開は有界保型形式については以前、荒川氏が与えたのだがフーリエ展開の各項にどのような関数が現れるかは完全に分っていなかった。そこでわたくしは有界保型形式のみならず必ずしも有界でなくてもよい保型形式についてフーリエ展開の理論を、各項にどのような関数が現れるかを具体的に与えた形で表示しようと試みた。その結果あるテータ関数を用いて完全な表示を得ることができた。しかも興味深いことに、このテータ関数は非正則であるSp(1,q)上の保型形式のフーリエ展開に生じるにも関わらず、古典的な正則テータ関数とよく似ていることが分かった。更にこのフーリエ展開の具体的表示によってこの保型形式はケッヒャー原理、つまりそれが持つ解析的性質によりその緩増大性が自動的に保証されてしまうということも分った。この原理は今まで正則保型形式にしか認められなかったことであり、非正則保型形式でケッヒャー原理が確かめられた例はこれがはじめてだと思われる。
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