2003 Fiscal Year Annual Research Report
ミトコンドリアゲノム分析に基づく下位条鰭類高次系統の解明
Project/Area Number |
02J07304
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井上 潤 東京大学, 海洋研究所, 日本学術振興会特別研究員(PD)
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Keywords | 分子系統 / 条鰭類 / ミトコンドリアゲノム / 古代魚 / 大系統 / 進化 |
Research Abstract |
昨年度論文として公表した下位条鰭類の分子系統解析に基づき,条鰭類内部における系統学的問題に着手した. 下位真骨類の一群であるカライワシ類の系統解析を行い,論文として公表した.カライワシ類は特異な仔魚形態であるレプトケファルス幼生を根拠として1966年にGreenwoodらによってまとめられた一群であるが,その後40年間にわたってその単系統性が盲目的に信じられてきた.成魚の形態があまりにも多様であるため形態学的データに基づく解析は不可能であったのである.また,これまで分子分析に用いられてきたデータでは,1億年を超えるカライワシ類の歴史を解明するのは不可能であった.本研究ではミトコンドリアゲノム全塩基配列という従来の10倍以上のデータを用いて解析を行うことによりカライワシ類の単系統性を証明し,Greenwood et al.(1966)依頼の魚類学最大の謎を解明した. さらにカライワシ類の分子分析を行う過程で,特異な形態で知られる深海魚・フウセンウナギのミトコンドリアゲノムにおいてこれまでの常識では考えられないような遺伝子配置を発見し,論文として発表した.フウセンウナギ類は形態的にあまりにも特化しているため,一部の研究者は硬骨魚類ですらないと結論していた.本研究では,この特異な形態をしたフウセンウナギ類において,ミトコンドリアゲノムの遺伝子配置も奇妙なものであったことを報告した.さらに,これまで報告されている真骨類57種のミトコンドリアゲノムデータとあわせて詳細な系統解析を行うことによって,フウセンウナギ類が実はウナギ類の一部から派生してきたことを明らかにした. 以上の成果によって最終となる次年度の課題が明確になった.これまで行ってきた魚類の分子分析は系統関係を明確にするものであった.次年度,あるいはより将来の目標として,分子系統樹に時間軸を設定することが可能になってきた.
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Inoue, J.G., Miya, M., Tsukamoto, K., Nishida, M.: "Mitogenomic evidence for the monophyly of elopomorph fishes (Teleostei) and the evolutionary origin of the leptocephalus larva"Molecular Phylogenetics and Evolution. In press.
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[Publications] Inoue, J.G., Miya, M., Tsukamoto, K., Nishida, M.: "Evolution of the deep-sea gulper eel mitochondrial genomes : large-scale gene rearrangements originated within the eels"Molecular Biology and Evolution. 20. 1917-1924 (2003)