2002 Fiscal Year Annual Research Report
日本の階層構造・階層文化の変容・再編と教育との相互規定的メカニズムに関する研究
Project/Area Number |
02J07319
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森 直人 東京大学, 社会科学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 教育 / 社会学 / 社会階層・階級 / 社会移動 / 階層文化 / 生活構造 / 社会意識 |
Research Abstract |
本年度は以下の3点について研究を行ない、成果を得た。 1.日本社会の近代化過程における階層構造の変動がもたらした社会移動パターンの特性や社会意識の形成とその変貌に関する先行研究のレビューを行なった。 出身階層による学歴達成や地位達成の相対的格差の存在にも関わらず大衆的規模での学歴取得競争が生起したメカニズムと、その背景に固有の社会意識の解明という課題に対して、近年では近代日本の教育と社会移動に関わる構造変動の重要性を指摘するものが潮流をなしていることが明らかとなった。 2.戦間期から戦後・高度成長期にかけての社会階層と社会意識との動態的相互関連性を明らかにするため、言説分析の手法を用いて「中流」言説における問題構制の歴史的変遷の解明を行なった。 問題構制の変遷は(1)1910〜50年代前半、(2)1950年代後半〜70年代末、(3)1970年代末〜、の3つの時期に区分される。固有の「職業」「生活様式」の観点から社会的に自明な存在であった「中流」が、やがて「意識」の側面からその内包を拡散させていき、自明性を希薄化させたプロセスが明らかとなった。 3.戦前の山形県鶴岡市に存在した中等学校のうち、鶴岡工業学校を具体的対象として学籍簿・同窓会名簿および同市郷土資料館所蔵の戸数割税務資料を用いて個人単位のデータセットを作成し、戦間期以降における同校卒業生の社会移動の実態を明らかにした。 比較的低い階層出身者に対しても開かれた社会移動ルートとして旧制工業学校が存在したことと同時に、他方で卒業生の社会移動そのものについては家族関係や生活構造が独自の重要な意味合いを持つことが明らかとなった。 1.はSocial Science Japan, No.25にその一部を発表し、2.は日本教育社会学会第54回大会(於広島大学)「教育言説」部会において口頭発表、3.は共著で『東京大学大学院教育学研究科紀要』第42巻に発表した。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 広田照幸, 森 直人, 寺崎里水: "旧制工業学校卒業生の社会移動に関する研究-山形県立鶴岡工業学校を事例として-"東京大学大学院教育学研究科紀要. 42. 65-97 (2003)
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[Publications] Mori, Naoto: "Education and Success : Changes in Structure and Thinking"Social Science Japan. 25. 16-18 (2003)