2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J07347
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡崎 寛徳 東京大学, 史料編さん所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 儀礼 / 交際 / 贈答 / 特産品 / 食文化 / 日常生活 / 象徴 / 什物上覧 |
Research Abstract |
「近世武家社会の儀礼と交際」という課題のもとに研究を進め、いくつかの論文を発表した。将軍・大名の日常生活・意識を解明すること、大名間の交際を解明すること、そして将軍・大名の行動規範を解明することが目的であり、これらの考察を通して、儀礼と交際という視点から、近世社会像をより豊かに構築していくことを目指した。 本年は贈答と食事を中心とした分析を進めた。鷹贈答とともに、特産品の贈答、特に、食材・料理に注目した。幕末の彦根藩主井伊直憲に焦点をあて、贈答を通じての大名間の交際を明らかにした。彦根城博物館所蔵の井伊家文書から、従来あまり扱われてこなかった献立史料を使用し、幕末京都における大名の食生活を、当時の政治社会状況との関連で考察。また、大名の交際関係については、贈答品選択に先例を重視しており、地域の名産品・極上品を多用していたことを解明。食文化史の研究自体がこれからの分野ということもあり、意義ある研究と考える。 さらに、近世武家のシンボル・象徴の一つと考えられる武具についても検討を行った。特に、将軍吉宗の行動に着目したところ、吉宗が全国に所在する古来からの武具に関心を持ち、それを江戸城で上覧し、かつ写を作成するなど、幅広い活動を見ることができた。具体的には、八王子下原刀と青梅御嶽神社大鎧を事例として「多摩」地域と将軍の関係を指摘したことと、諸大名・旗本家代々の所蔵什物を吉宗が上覧したことが記録化されており、文化的価値が高まったことを明らかにした。
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[Publications] 岡崎寛徳: "京都における青年大名の食生活-明治元年の井伊直憲-"季刊ヴェスタ. 48. 55-61 (2002)
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[Publications] 岡崎寛徳: "食材・料理贈答にみる大名の交際-最後の彦根藩主井伊直憲を事例として-"食生活研究. 128. 1-8 (2002)
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[Publications] 岡崎寛徳: "将軍吉宗と「多摩」の武具"中央評論. 242. 28-35 (2002)
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[Publications] 岡崎寛徳: "将軍吉宗の諸家什物上覧"関東近世史研究. 53. (2003)