2002 Fiscal Year Annual Research Report
西太平洋海域における浮遊性有孔虫の生態と分子系統:海洋環境指標の再確立を目指して
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02J07367
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
氏家 由利香 東京大学, 海洋研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | 西太平洋 / 黒潮 / 層別プランクトンネット / 生きている浮遊性有孔虫 / 浮遊性有孔虫のSSUrDNA / 琉球孤海域 / 安定酸素・炭素同位体比 / 海水試料 |
Research Abstract |
浮遊性有孔虫は全海洋域に生息する海洋プランクトンであり、海洋表層水の性質(水温・塩分等)に依存してその種の分布が決められている。そのため、海底堆積物を用いた古海洋環境の解析において、表層海水の情報を記録する浮遊性有孔虫は、堆積物中に残されたその殻の安定酸素同位体比が表層水温の変化を、また炭素同位体比や微量元素等が生物生産量の指標として、幅広く活用されている。しかし、生きている有孔虫の生態は不明確なことが多いため、過去の変動で解釈できない現象が数多く残されている。また、殻形態に基づく種分類では全海洋間で広範に同一種が認められるが、遺伝子レベルでは水塊による種分布の制約が見られるため、これらの遺伝的距離を知ることは、地質時代における海洋循環の発達の解明する必要がある。そのため、10月に東大海洋研究所所有の研究船淡青丸で琉球弧周辺海域の航海を行い、以下の手法を用いて研究を進めた。 [1]MTDネット・ノルパックネット試料、海水試料、CTDデータを用いて; 調査対象海域である琉球弧海域にて、計16地点で試料採取を行った。水深0・50・75・100・150・200mの層別プランクトンネット曳きで、生きている浮遊性有孔虫を採取し、種組成を調べることによってそれらの生態を明らかにする。また別途ノルパックネットで採取した試料を用いて遺伝子分析を行っており、11種のSSUrDNAの塩基配列を導き出しつつある。同時に、水柱に沿って水温・塩分・溶存酸素量等の測定も行っているため、季節による諸種の環境条件(黒潮下:東シナ海、非黒潮下:太平洋)との関連も可能である。さらに、北西太平洋から初めてのアプローチとなる遺伝情報と合せて、詳細な海洋環境情報を示す指標の確立を目指す。 [2]マルチプルコア試料を用いて; [1]の結果を古海洋環境の研究に適用するため、水中と表層堆積物中の浮遊性有孔虫群集を比較する。堆積物は、時間スケールが全く異なり、続成作用等も受けるため、堆積物中に現生の情報がどのように保存されるか、同地点で水中試料と堆積物試料を採取し評価する。
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Research Products
(1 results)
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[Publications] Narita, H., Sato, M., Tunogai, S., Murayama, M., Ikehara, M., Nakatsuka, T., Wakatsuchi, M., Harada, N., Ujiie, Y.: "Biogenic opal indicating less productive northwestern North Pacific during the glacial ages"Geophysical Research Letters. 29. (2002)