2003 Fiscal Year Annual Research Report
精神分析的児童研究の展開とその教育への影響に関する教育思想史的研究
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02J07401
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
下司 晶 東京大学, 大学院・教育学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | S・フロイト(Sigmund Freud) / 精神分析(psycho analysls) / ユング(Carl Gustav Jung) / <子ども>史 / 教育思想史 / J・ボウルビィ(John Bowlby) / フーコー(Michel Foucault) |
Research Abstract |
平成15年度は、S・フロイトの思想における<子ども>の位置を探り、同時に彼に端を発する精神分析的<子ども>言説の歴史的変容と、その後代への影響を研究した。国内では入手が困難な資料等に関しては、海外にて調査・資料収集にあたる予定であったが(外国旅費として予算計上)、実際には私費で渡航し(8月、ウィーン)、補助金は国内での研究にあてた(主に消耗品費・国内旅費として計上)。研究実績の概要は下記の通り。 (1)S・フロイトの1897年の思想転換といわれる<誘惑理論の放棄>において、(a)その転換を「心理学的」に読解する言説が1950年代に形成されたことを時期を明らかにし、(b)フロイトの実際の変節においては、彼が依拠した生物学理論の変遷が重要であることを明らかにした。 (2)1912年前後を中心としたフロイトとユングの分岐において、進化論的生物学(E・ヘッケル的な反復説)に裏打ちされた子ども像である<人類の先史としての子ども>が主要な役割を果たしていたことを、当時の書簡や著作から明らかにした。 また上記と平行して下記の個別研究もすすめており、さらに同時に、申請者のこれまでの研究を一つの論文としてまとめる作業も進行中である(いずれも平成16年度に発表予定)。 (3)J・ボウルビィの愛着理論および母性剥奪理論の成立背景を、主に生物学と進化論との関係から研究した。 (4)精神分析が教育言説や子ども論へ受容された時期とその各形態を歴史的に解明した。 (5)研究全体を見通す視点として、主にJ・デリダに依拠しつつ、M・フーコーの思想における精神分析の位置を探った。 なお、以下の学会および研究会に参加した(東京開催の研究会は未記入)。教育思想史学会(第13回大会、2003年9月、於 目白大学)、教育哲学会(第46会大会、2003年10月、於 京都大学)。教育詩学研究会(代表 鈴木晶子 京都大学教育学部助教授、2003年6月、於 京都大学)。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 下司 晶: "<現実>から<幻想>へ/精神分析からPTSDへ -S・フロイト<誘惑理論の放棄>読解史の批判的検討"近代教育フォーラム(教育思想史学会). 第12号. 181-197 (2003)
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[Publications] 下司 晶: "フロイトとユングの分岐における<人類の先史としての子ども> -精神分析と起源を求める視線"東京大学大学院教育学研究科紀要. 第43巻. 43-53 (2004)