2002 Fiscal Year Annual Research Report
赤痢菌III型分泌装置の構造・機能解析及び大腸上皮細胞への病原因子輸送機構の解明
Project/Area Number |
02J07409
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
玉野 孝一 東京大学, 医科学研究所, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 細菌 / 微生物 / 病原性 / 分泌装置 / エフェクター |
Research Abstract |
赤痢菌III型分泌装置を細胞質側構造体と考えられているバルブを有する状態で精製することを様々な条件で試みたが、バルブを有する状態で本装置を精製することは不可能であった。また、浸透圧ショックを行った赤痢菌の電子顕微鏡観察により、他の研究グループが報告したこのバルブ構造は、実際は蛋白からなる構造体ではなく、内膜の一部が浸透圧ショック時に集まってできた小胞ではないかと考えられた。 そこで、本来のIII型分泌装置の細胞質側構造体の構造を明らかにする目的で、界面活性剤の非存在下で赤痢菌の反転膜小胞を作製し、本小胞表面に露出したIII型分泌装置の細胞質側構造を電子顕微鏡で観察することを試みた。これまでの反転膜小胞の作製は、III型分泌装置を有しない大腸菌K-12株を用いて行われてきた。この従来の作製法を用いて赤痢菌の反転膜小胞の作製を試みたところ、本小胞は電子顕微鏡観察により作製されているものと考えられた。しかし、本法では赤痢菌反転膜小胞を細胞質側構造体の急速凍結レプリカ電顕による立体構造解析や、その構成成分の同定を行えるまでに精製することができなかった。 そこで、ある大腸菌内膜蛋白の細胞質側突出部位にペプチドタグを付けたものを赤痢菌野生株に発現させ、本菌の反転膜小胞サンプルを作製し、最後に抗ペプチドタグ抗体の抗原特異性を利用して反転膜小胞を精製する系を考えた。現在、その系の開発を行っているところである。 同時に、赤痢菌III型分泌装置の細胞質側構造体を構成していると考えられる四種の蛋白について、それぞれを欠失した赤痢菌変異株を作製した。また、これら四種の蛋白はいずれも疎水性領域の多い膜蛋白であったため、抗体の作製は困難を極めたが、このうち一種の蛋白について部分ペプチドを抗原としてウサギを免疫することにより、イムノブロットで使用可能な抗体を作製することができた。
|
Research Products
(1 results)