2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J07440
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松本 高広 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 特別研究員(PD)
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Keywords | アンドロゲン受容体 / ノックアウトマウス / 性分化 / 核内転写因子 / 中枢神経系 / 性行動 |
Research Abstract |
男性ホルモンであるアンドロゲンは、多彩な生理作用を示すことが知られており、その作用はリガンド依存的転写制御因子であるARを介した標的遺伝子群の発現制御により発揮される。AR遺伝子座はX染色体にあり、雄(XY)個体におけるAR欠損は雄性生殖器等の形成不全を伴う雌性化(testicular feminization ; Tfm)を引き起こす。ヒトにおいても、AR遺伝子変異により生じるTfm疾患は古くから知られており、AR遺伝子ノックアウト(ARKO)マウスの作出は有用な疾患モデルになると予想された。しかしながら、AR欠損雄個体は生殖能力を欠くため、その変異は次世代に伝わらない。これらの事実から、ARKOマウスの作製は通常のジーンタゲティング法では不可能である。我々は第一にCre-loxP systemを用いることにより、生殖可能な潜在型ARKOマウス(AR floxedマウス)から雌雄ARKOマウスを作製する方法を確立し、雌雄ARKOマウスのライン化に初めて成功した. 従来より、脳神経細胞内での一般的なアンドロゲン作用は、アンドロゲンより転換されたエストロゲンがエストロゲン受容体を介し作用すると考えられてきた。一方、脳の性差とその性分化にARが直接関与するか否かは未だ不明である。この点を明確にする目的で、ARKOマウスを用いて最も雌雄差が顕著な性行動、攻撃行動を指標として解析を行った。その結果、ARKO雄では雌性行動ばかりでなく、マウント、挿入、射精の全ての雄性行動の消失が観察された。さらに、ARKO雄では他の雄に対する雄性攻撃行動の著しい低下が確認された。次に、非芳香化アンドロゲンであるジヒドロテストステロン(DHT)を去勢雄ARKOに投与したところ、雄性行動の発現は消失していた。一方、雄性攻撃行動ではARKO雄における攻撃行動がDHT投与により一部回復した。これらの結果から、雄性特異的な行動の発現調節にARが必須であること、さらに雄性攻撃行動にはARを介さないアンドロゲンシグナルによっても一部制御を受けていることが明らかとなった.
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Research Products
(2 results)
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[Publications] ^*Takashi Sato, ^*Takahiro Matsumoto, ^*Authors equally contributed: "Late onset of obesity in male androgen receptor-deficient (ARKO) mice"Biochemical and Biophysical Research Communication. 300. 167-171 (2003)
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[Publications] 松本 高広: "エストロゲン、アンドロゲンレセプターノックアウトマウスの最新の進歩"小児科診療. 65巻10号. 133-140 (2002)