Research Abstract |
ヨシ属が担うファイトレメディエーションとしての役割は高く,周辺農地への人工湿地や河畔緩衝帯にヨシ属が頻繁に導入されてきた。しかし近年では,これらヨシ属が急速に農地へ侵入しており,新たな強害雑草としてヨシ属(特にツルヨシ)の抑制が求められている。しかし,ツルヨシは東アジアに特異的に分布するため,本種の生理生態的特性に資する知見は殆ど無い。そこで本研究では,ツルヨシの抑制管理について提唱することを目的に,その基礎として同種の種子ならびに匍匐茎の他感的地位を検討した。 まず,ヨシ,ガマ,クサヨシ,フトイ,ツルヨシおよびエゾミソハギのリター粉末を蒸留水に浸し10gl^<-1>濃度のリター溶出液を抽出した。次いで,シャーレ内にツルヨシの種子および匍匐茎(3cm長)をそれぞれ置床し,先のリター溶出液を加えた(実験1)。その結果,各種リター溶出液はツルヨシ種子の発芽伸長を抑制したが,匍匐茎のそれに影響は認められなかった。一方で,合成吸着樹脂アンバーライトXAD-4で上記6種のリター溶出液をそれぞれ濾過,抽出後(以下,XAD-4処理液),ツルヨシ種子に加えた(実験2)。その結果,XAD-4処理液の添加に際して,ツルヨシ種子の発芽伸長に及ぼす影響は認められなかった。これは,実験1で観察されたツルヨシ種子の発芽伸長抑制が他感作用によるものであることを示した。 以上から,ツルヨシは,種子よりも匍匐茎で他感的地位が高く,その分布拡大には匍匐茎が大きく寄与し,ツルヨシの抑制管理には匍匐茎の駆除によるところが大きいことが示唆された。なお本供試試料は,地域性ならびに立地条件による違いを考慮すべく,九州から北海道までの数地点において採取したが,地域性や立地条件による差異は認められなかった。
|