Research Abstract |
本研究は,断層近傍の不均質構造の物性および変動をモニタするために,精密な調和波動を用いた地震波トモグラフィ手法を開発することを目的としている.平成14年度では,局所的に分布する散乱体を同定するインバージョン法の基礎理論を開発した.また,当初は,岩石資料を用いた散乱実験を予定していたが,プロジェクトの全体計画の都合により,精密制御震源の試作機および観測装置をテストフィールドへ展開し,その性能試験を行った.以下に,その概要を示す. 1.すでに開発していた精密制御震源と観測システムを,山梨県大月市にある葛野川発電所の巨大地下空洞に展開した.当初,地下ならではの高湿度による機器の損傷や時刻信号の伝達問題,電源の確保などの問題が発生したが,これを解決し,観測実験ができる状態にした.また,この装置を用いて震源の性能を検証した.(1)震源が異常振動を励起せず,正常に動作していることを確認した.当初,期待される調和振動の他に強い高調波が観測されたが,これは定着装置の弾性変形による正常な振動であり,震源自体は綺麗な調和波動を励起している.(2)また,地下の常時モニタに必要な時間安定性を確認するために,24時間連続観測を行い,励起している波動場が極めて安定であることを確認した.励起した波動場のゆらぎは,0.1%程度であり,これから行う本格的な地下構造モニタリングに十分な性能を有していることを示した. 2.調和波動を用いた場合,沢山の周波数成分を観測し,逆フーリエ変換により時刻領域のデータを推定し,従来型の地震波トモグラフィを実行することが可能であるが,本研究では,従来と異なる震源のフェイズドアレイを用いた手法の開発を試みた.(1)波動場のフォワード計算により,精密制御震源アレイの波動場励起力を調べ,定量的に評価した.(2)散乱体をボルン近似によりモデル化した最も単純な波形インバージョン法のアルゴリズムを開発した.このアルゴリズムは,本手法の基礎となるものである.
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