2002 Fiscal Year Annual Research Report
国際課税における恒久的施設概念その他の課税管轄権配分基準について
Project/Area Number |
02J07811
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
浅妻 章如 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 国際課税 |
Research Abstract |
国際的な組合契約に対するPE(恒久的施設)課税についてアメリカの裁判例を幾つか検討した結果、以前から、組合類似の契約、特にlimited partnership契約について、limited partnerの地位が投資家に似ているとの指摘があったこと、それにもかかわらず裁判所は事業者と見てPE課税をしてきたこと、そしてなぜ投資家と見ずに事業者と見るかについて裁判では殆ど説明がなされないままであること、などが分かった。 知的財産について特に不法行為法との関わりを検討した結果、租税法律家の目から見ると、知的財産を保護することの萌芽は、先行事業者の事業利益を後行事業者の不正な競争から保護することにある、と捉えることができるのではないかと考えるようになった。つまり情報の保護ではなく事業利益の保護が核であるという捉え方である。これはあくまで租税法からの検討であり、情報保護に関する知的財産法律家の検討に異議を唱えようとまでするものではない。 そしてこの検討結果から、事業利得課税と知的財産使用料課税との間に差を設ける合理性はないのではないか、という疑問が浮かんだが、そこは一足飛びには行かず、今後も検討を続ける必要がある。この考え方を外国の教授・博士課程レベルの研究者に披露したところ、所得配分を如何にすべきかという有益な質問が返ってきた。 また、知的財産侵害における損害賠償の範囲を検討した結果、従来の私法律家による損害賠償の考え方には損害といえないものまで損害賠償の範囲に含めているのではないかという疑問、また、損害賠償における知的財産権利者の権利の範囲と、租税法の移転価格・所得配分の場面における知的財産権利者のarm's lengthの取り分の範囲との間には、違いがあるかもしれない、という疑問が浮かんだ。 後者の知的財産の検討については、将来、小論文を掲載していただけるかもしれない。
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