2003 Fiscal Year Annual Research Report
高エネルギーイオンを用いた低次元構造体におけるキャリア輸送過程の研究
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02J07849
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
越水 正典 東京大学, 大学院・工学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 高密度励起 / イオンビーム / 電子-正孔プラズマ / CdS / MgO / 時間分解発光スペクトル / 拡散 |
Research Abstract |
今年度は、時間分解発光スペクトルの測定により、高密度励起状態のダイナミクスの解析を行った。単一のイオンが入射する時間を、イオンがCarbon foilを通過した際に放出される二次電子をMCPによって検出することによって同定し、イオン誘起発光が検出される時間との時間差を測定することにより、発光時間プロファイルを得た。これを、複数の発光波長で測定することによって、時間分解発光スペクトルを得た。 半導体であるCdSを試料として測定を行うと、220ps程度の輻射寿命をもった、電子-正孔プラズマのものと思われる発光帯が観測された。この発光帯の形状は、イオンによる励起密度によって変化した。この発光体の形状解析を行い、輻射緩和開始時での励起キャリア密度を同定することができた。各イオンによる励起によって得られたキャリア密度の比は、各イオンによる励起密度の比と非常によく一致した。このことから、本研究での解析手法が非常に妥当であることが裏付けられた。また、キャリア-フォノン相互作用を考慮した拡散モデルにより、実験結果を再現することに成功した。これらのことから、半導体中での局所高密度キャリアの空間挙動が、キャリア-フォノン相互作用を考慮することによって定量的に記述できることが明らかとなった。 一方、MgOを試料として発光測定を行ったところ、励起密度の増大とともに、自由励起子発光強度が減少し、ついには観測されなくなった。同時に、その低エネルギー側に、新たな発光帯が出現し、その強度は励起密度の増大とともに急速に大きくなった。これらの結果は、高密度励起による静電遮蔽によって自由励起子が安定でなくなり、高密度電子-正孔対による発光帯が新たに出現したものと考えることができる。しかし、詳細なダイナミクスや発光起源についてはまだ解明できていない。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] M.Koshimizu, K.Shibuya, K.Asai, H.Shibata: "Measurement of the Local Temperature in an Ion Track Using Low-Dimensional Quantum Confinement Structure"Radiation Physics and Chemistry. 66. 35-38 (2003)
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[Publications] M.Koshimizu, K.Shibuya, K.Asai, H.Shibata: "Observation of Local Heating in an Ion Track by Measuring the Ion-Induced Luminescence Spectrum"Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B. 206. 57-60 (2003)
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[Publications] M.Koshimizu, K.Asai, K.Kimura: "Time-resolved luminescence spectra of electron-hole plasma in ion-irradiated CdS"Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B. 212. 376-380 (2003)