2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J07885
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
遠藤 博寿 東京大学, 海洋研究所, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 甲殻類 / 外骨格 / 石灰化 / カルシウム結合タンパク質 / 分子生物学的手法 |
Research Abstract |
海産無脊椎動物の骨格形成機構を調べる目的で、クルマエビの外骨格における石灰化の分子機構についての研究を進めている。これまでの研究から、外骨格の石灰化が起こる時期である脱皮後期特異的に上皮細胞層において発現する遺伝子DD4を同定している。本年度はこの遺伝子のコードするタンパク質についてより詳細な解析を行った。 遺伝子DD4のORFをRACE法を用いて増幅した結果、それまでに得られていたORFの5'側に約300残基のアミノ酸をコードする新たなORFを見出した。この領域中には、E-rich regionと名付けた極端にグルタミン酸に富む配列が見られた。この配列は121残基から成り、その約48%がグルタミン酸であるという特殊な一次構造を有していた。このようなグルタミン酸に富む配列は、脊椎動物の骨に含まれるBone sialoproteienというタンパク質においても見られ、リン酸カルシウムの結晶核形成を促進することが確認されている。しかしながら、無脊椎動物の硬組織由来のタンパク質においては、同様な配列を持つタンパク質の報告は現在までのところ皆無である。そこで、この新たに見いだしたE-rich regionの機能解析も含めた研究を行った。 まず、E-rich regionのCa^<2+>結合能の有無を調べた。その結果、この領域はCa^<2+>結合能を有していることが確認された。また、精製した抗体を用いて免疫組織化学を行った結果、DD4タンパク質は外骨格において強く石灰化されている部分に局在していることが確認された。さらに、RT-PCRを用いて脱皮後期における遺伝子DD4の発現時期と石灰化の進行を詳細に調べた結果、遺伝子の発現は石灰化の開始に先立って起こることがわかった。これらの結果から、DD4タンパク質は石灰化の過程を促進していると考えられる。
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