2002 Fiscal Year Annual Research Report
超低温走査トンネル顕微鏡を用いた2次元量子固体の研究
Project/Area Number |
02J07895
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松井 朋裕 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 超低温 / 走査トンネル顕微鏡 / 量子固体 / 物理吸着 |
Research Abstract |
グラファイト基盤上に物理吸着した希ガス原子や水素分子の2次元固体の構造を実空間観測するため、現有の超低温走査トンネル顕微鏡の空間分解能の改善作業をまず行った。これは建設の終了した同顕微鏡のテスト運転を行ったところ、渦電流ダンピングが効く高磁場中でのみ辛うじて原子分解能が得られるという振動問題があることが判明したためである。そこで、加速度計を使って装置各部の徹底した振動測定と周波数分析を行い、除振架台の性能が不十分であったこと、STMヘッドの懸架方法が水平方向の振動に弱かったことなどを突き止めた。これらを改善した結果、ゼロ磁場中でも比較的良好な原子分解能が安定して得られるようになった。また、同顕微鏡の熱絶縁機構の改良も同時に行い、試料温度30mKという超低温度でSTM実験ができるようになった。 次に、さらなる分解能の向上を計るため、探針先端の清浄化、先鋭化を種々の方法で試みた。その結果、電界研磨した直径0.3mmのタングステン線の先端を超高真空中で電子ビーム加熱して酸化物等を除去した後、金試料表面に対する電界放出法で金コートすることで、十分な原子分解能をもつ探針を歩留まりよく作成できるようになった。 2次元固体試料の面密度の正確なコントロールは、予冷/試料準備チャンバー内でHOPG基盤に対する試料ガスの等温吸着曲線を測定することで行う。その予備実験としてクリプトンの等温吸着曲線を測定し、1層完結に対応するステップ構造が明瞭に観測されることを確認した。このとき、チャンバー内には312m^2という大表面積をもつグラフォイルをHOPG基盤に隣接して設置し、測定精度の大幅な向上を図った。この方法で試料の面密度を精度よくコントロールできる見通しがたった。現在は、2次元固体クリプトンおよびキセノンのドメイン壁構造のSTM観測を開始したところである。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] T.Matsui: "Construction of an Ultra-Low Temperature STM with a Bottom Loading Mechanism"Physica B. (印刷中). (2003)
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[Publications] H.Kambara: "Preliminary Scanning Tunneling Spectroscopy Studies of Sr_2RuO_4"Physica B. (印刷中). (2003)