2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J07955
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
土居 雅夫 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 概日時計 / 光位相シフト / E4BP4蛋白質 / カゼインキナーゼ1 / Per2遺伝子 / 転写抑制因子 / ニワトリ松果体 / Z3細胞 |
Research Abstract |
交付申請書に記載した研究目的・研究実施計画に沿って研究を行い、下記の成果を得た。 □Z3細胞を用いた遺伝子機能の検定システムの確立に向け、まずZ3細胞の光受容能を確認した。具体的には、Z3細胞において時計遺伝子が光刺激によって発現誘導されることを確認した。これと並行して、ニワトリ松果体を実験材料に用いて新規時計因子E4BP4の性状解析を行った。まずE4BP4蛋白質の動態を調べるため、特異的な抗体を作成してWestern blot解析を行った。ヒヨコを恒暗条件において飼育し、松果体に発現するE4BP4の蛋白質量の経時変化を追跡した。その結果、E4BP4の蛋白質量は時計遺伝子Per2のmRNA量が低い時間帯(主観的夜)にピークをもつ日周変動を示すことが分かった。この観察結果は、E4BP4がPer2遺伝子の転写を抑制することを示した申請者の先行研究を裏付けるものであり、このE4BP4によるPer2の転写抑制が生体内においてPer2遺伝子の発現リズムの形成に寄与していることを示唆する。さらに興味深いことに、E4BP4蛋白質の動態を解析する過程で申請者は、E4BP4蛋白質の電気泳動上の易動度が一日の時刻に依存して変化することを見出した。見かけの分子量が上昇したE4BP4蛋白質はフォスファターゼ処理をすることによって本来の分子量を示すようになったことから、E4BP4はリン酸化されておりリン酸化の有無によって易動度が変化することが判明した。この易動度変化はE4BP4上に存在するカゼインキナーゼ1(CK1)の標的配列に変異を導入した場合には消失したことから、E4BP4のリン酸化にはCK1が関与する可能性が高いことが分かった。この結果は、ショウジョウバエやハムスターにおいてCK1の変異が時計の発振異常を誘導することとよく合致する。今後はCK1によるリン酸化を介したE4BP4の機能制御メカニズムを解析することによって時計発振システムの実体に迫ることができると期待される。なおZ3細胞を用いた実験ならびにE4BP4のリン酸化部位の検索は、Sassone-Corsi博士の協力を得て申請者が仏国において遂行した。
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Research Products
(1 results)