2002 Fiscal Year Annual Research Report
非線形システムの逆モデルを用いたオンライン学習制御理論に基づく脳の運動制御の研究
Project/Area Number |
02J07968
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮村 亜位子 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 小脳 / 運動制御 / システム理論 / 行動選択 / むだ時間 / 安定性 / ロバスト安定 |
Research Abstract |
脳機能を複雑かつ巨大な非線形ダイナミカルシステムと捕らえ、システム論的観点から脳の計算理論における安定性や妥当性を解析することを研究の主目的と位置づけて研究を遂行した。まずは脳の中でも特に運動制御機能を担っていると考えられている小脳に注目した。生理学の知見から小脳は階層的かつ機能分化しているという構造的特徴を持つことが示唆されており、この事実は計算理論においても同様な構造、つまり階層性や分散性を持つと推測され、このような立場から小脳の運動制御モデルとして「分散的運動制御アルゴリズム"Decentralized Motor Control"」を提案した。この結果は国際会議(International Joint Conference on Neural Networks 2003)での口頭発表が決まっている。更に大脳皮質、大脳基底核、扁頭体、海馬などが主にその役目を担っていると考えられている意思決定や行動選択、更には言語などのより高次な脳機能においても実は小脳が重要な役割を果たしているのではないかと考え、大脳基底核を含むループでの強化学習の枠組みと小脳を含むループでの教師あり学習の融合かつそういった学習過程を修飾するホルモン系の役割などを統合した脳の高次機能の計算モデルの構築に向けて現在研究している。 上記の研究と並行して関数微分方程式の安定性解析に関する研究も行った。具体的には脳や遺伝子ネットワークなどの生物システムに不可避な時間遅れをもつような非線形システムのロバスト安定性を効率的に解析する手法を提案した。時間遅れを持つシステムは無限次元システムと同様の複雑なダイナミクスをもち、また不確かさが常に内在するためそのロバスト安定性を知ることは重要かつ最も基礎となるものである。この研究の結果は論文にされ現在雑誌International Journal of Theoretical Biologyへ投稿中である。このような基礎的な研究は様々な分野への応用が可能であり、特に自己の研究の繋がりで言うと脳の高次機能や遺伝子ネットワークなどのより複雑な対象を研究する為の手法として有効である。
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