Research Abstract |
本年度は,多人数の被験者集団にも適用できる可能性を持つ生体電気インピーダンス(BI)法に着目し,それらによる四肢筋体積推定の妥当性を検討することを目的とした. 成人男性21名を対象に,上腕部,前腕部,大腿部および下腿部からそれそれBI値を取得し,BI法による筋体積推定式を得るために,MR法筋体積を従属変数,BI値と四肢長から計算した筋体積指標(BI index:四肢長2/BI)を説明変数とする単回帰分析を行った.その結果,各セグメントについて,決定係数がR2=0.828.0.947,SEEが6.6%.8.9%という推定式が得られた.さらに,本研究では,電気的並列等価回路モデルを肘関節の伸展筋群および屈曲筋群に当てはめ,肘関節角度を変化させた際のBI値から,両筋群の体積比(伸筋屈筋体積比)を算出し,伸展筋群および屈曲筋群の各体積の推定を試みた.その結果,肘関節角度0°と90°時の上腕部BI値の比により伸筋屈筋体積比をSEE=9.3%の精度で推定が可能であった.さらに算出された伸筋屈筋体積比と上腕部全体の推定筋体積を用いて,屈曲筋群および伸展筋群の各体積を推定したところ,その精度は前者がSEE=12.2%,後者がSEE=10.9%であり,BI法によっても屈曲筋群および伸展筋群の各体積をそれそれ個別に求めることができる可能性が示された.また,BI法を用いた筋体積の推定精度をより高めるために,BI値の計測に関連した誤差要因について,検討した結果,脂肪および骨の体積比率,骨密度,および筋形態の個人差が誤差要因となることが確認された.このことから,BI法では,筋量比率が低くなる位置を避けて電圧計測電極を配置しBI値を計測すること,また,筋形態における位置差を考慮に入れ,測定部位を細分化した形でBI値を取得することで,より精度の高い筋体積推定が可能であることが認められた.
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