2002 Fiscal Year Annual Research Report
持続可能な開発を支援するための情報形成に関する研究
Project/Area Number |
02J08022
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
日野 明日香 東京大学, 大学院・新領域創成科学科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 公共事業 / 合意形成 / 専門家 / 科学知識 / 科学社会学 / 持続可能な開発 / 情報形成 |
Research Abstract |
平成14年度は、国内の沿岸域で行われた開発事業を複数選び、15年度に行う事例分析のための予備調査を行うことと、専門家あるいは専門知識が社会的意思決定に与える影響について先行研究を整理する計画であった。 予備調査については、(1)諌早湾埋立事業、(2)曽根干潟開発計画、(3)吉野川可動堰建設計画、(4)長良川可動堰建設事業、(5)三番瀬埋立事業計画、(6)中津干潟における海岸整備事業、(7)八坂川河川改修事業について事業予定地の視察および関係者へのインタビューを行い、事業計画のために行われた調査や合意形成会議等の報告書を入手した。現在その結果を比較検討中であるが、それぞれの事業をとりまく状況の違いなども考慮して、来年度にこれらの中から3つの事業を選び本調査を行う計画である。(現在のところ、吉野川可動堰建設計画中津干潟における海岸整備事業、三番瀬埋立計画を取り上げる予定である。) 先行研究の整理については、専門家あるいは専門知識と合意形成について特に国内の社会学的分野でどのような議論が行われているかをレビューした。その結果、欧米では科学社会学分野において、このような研究の蓄積があるのに比べて、国内ではこの分野の研究はまだ取り組まれ始めたばかりであり、国内の事例研究がほとんどないことが確認できた。 しかし、専門家についての社会学的議論の蓄積が全くないわけではなく、知識人論あるいは専門家論として議論されていたことがわかった。しかし、これらの議論の中心は専門家あるいは知識人の社会的責任や、専門家のもつ視角と市民の持つ視角の違いなどであり、本研究の関心事である専門知識が合意形成や意思決定に与える影響について論じたものはほとんどみられなかった。この先行研究のレビューについては、環境社会学学会誌に現在投稿中である。来年度は、通常の社会学分野だけでなく自然科学や境界領域といわれる分野どのような議論が見られるかを、レビューする計画である。
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