2002 Fiscal Year Annual Research Report
スタンダールの「民族誌」:人間研究から文学的創造へ
Project/Area Number |
02J08042
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
冨澤 玲子 (南 玲子) 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | フランス:イタリア:ドイツ:イギリス / 18・19世紀 / スタンダール / 文学 / 民族誌 |
Research Abstract |
平成14年度は、スタンダールの著作の分析のほか主に文学分野の先行研究を参照し、彼独自の「民族誌」の理論と実践の考究に努めた。1.審査を終えて論文集『スタンダール変幻』に掲載が内定していた論文「民族誌と『恋愛論』-スキアセッティとサルヴィアーティ-」が出版される前に加筆訂正を施した。作業を契機に1820年代のスタンダールの「民族誌」的作品に見られる理論とその応用例を再考した。2.『恋愛論』と前後して発表された『ラシーヌとシェイクスピア』並びに英国雑誌への寄稿文集を読解し、作家の社会的役割と文学的創造に関するスタンダールの見解を知ると同時に、「民族誌」に寄与する相対主義的視点が彼の文明論に存在することを確認した。3(1)スタンダールの「民族誌」誕生の文学史的背景を把握するため、十八世紀フランスのイタリア旅行記の特徴を調査した。特に彼の創作活動と人生観に多大な影響を与えたプレジダン・ド・ブロスの『イタリア書簡』を精読した。(2)(1)の研究の一部を論文にまとめ、雑誌(東京大学大学院総合文化研究科フランス系「レゾナンス」創刊号)の論文審査に合格したが、掲載前の推敲作業時にさらに完成度を高める必要性を感じ、指導教官と相談のうえ取り下げた。得られた見識は来年度の発表に活かす。4(1)スタンダールの「民族誌」の初期の実践の考察に着手した。「民族誌」的情報が『恋愛論』よりも直接的な形で利用されるテクストとしての『イタリア旅行記』とその準備段階の旅行ノートに着目し、現在分析に当たっている。(2)(1)の成果の一部を3の研究と統合して「プレジダン・ド・ブロス『イタリア書簡』の読者スタンダール」にまとめ、日本仏語仏文学会関東支部大会にて口頭で発表を行う(平成15年3月15日)。5.主要経費は当該研究のための参考図書購入費、及び最新資料の円滑な収集を実現するうえで必要なフランス旅行費に充てた。
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Research Products
(1 results)