2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J08049
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
朴澤 泰男 東京大学, 大学院・教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 高等教育 / 機会均等 / 政治過程 / 中教審 / 私学助成 / 奨学金 |
Research Abstract |
今年度は、1971年中教審答申の作成過程に関する事例研究、および1972年度・73年度の予算編成過程に関する事例研究を実施した。 具体的には、事例分析の前提となる政治・行政過程の再構成を目的として、資料の収集・整理作業を中心に行った。収集・整理した資料は、『朝日新聞』などの主要全国紙、『内外教育』などの教育専門紙、および教育関係雑誌などの記事である。それをもとに、各政治アクターの行動を年表にまとめた。 以上の作業によって明らかとなったのは、以下の三点である。 第一に、中教審答申では私学への経常費補助のみならず、奨学金予算の拡大も構想されたが、それは、高等教育に対する国の財政援助方式に関する経済理論を、ほぼ直接的に反映させた構想であった。したがって、両者は同列に扱われていたものの、いかなるバランスをとって制度化するかという制度設計レベルの議論を欠いていた。 第二に、中教審答申では、私学助成、奨学金とも理論的検討が述べられていたに過ぎないが、前者は、自民党の文教関係議員によって具体的な制度設計に関する検討が重ねられたため、1970年度にいち早く予算化され、以後数年の間、予算額が拡大した。 第三に、文部省が検討していた「学資ローン」制度構想は、私立大学生が入学金を銀行から借り入れ、国が利子補給する制度として、1973年度予算に新規に要求され、併行して「学資の融資に係る保証および利子補給に関する法案」も準備されたが、結局政府予算案には結実しなかった。
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