2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J08100
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 豪 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 量子可積分系 / Heisenberg模型 / 熱力学的Bethe仮説 / String仮説 / 自由エネルギー / クラスター展開 / 方法論 / 厳密解析 |
Research Abstract |
我々は今まで、量子可積分系を解析する新たな手法を提案し、1次元δ関数型Bose気体に対して、適応可能である事を示していた。しかし、この方法は、束縛解の存在する量子可積分系においては、適用方法が確立できていなかった。 本年は、束縛解の存在する量子可積分系でもっとも典型的なモデルとして、1次元Heisenbergモデルにたいする我々の手法の適応方法を確立した。その結果として、今日まで妥当性にたいする保証のなかった仮説に対して、一定の解釈を与えた。まず、String仮説によって計算される自由エネルギーが正しい値を得られる理由を与えた。さらには、熱力学的Bethe仮説に対して、問題点を指摘し、その注意喚起をした。 別の見方をすると、束縛解の存在するモデルに対して解析的かつ系統的に熱力学量を与える方法を確立した。そして、String解(束縛状態の熱力学極限)を系統的に導出することに成功したと言える。束縛状態を系統的に与えるという事は、物理を支配する法則を与えた時にそこに埋め込まれた高次の現象を支配する法則が系統的に得られると言い換える事ができる。これは、まさに統計力学が目標としている事であり、この方法が、一般の模型に対しても同様の解析ができれば、我々が抱える統計力学における困難が全て解決されるものである。 しかし、本研究成果である、束縛状態の系統的導出方法というのは、量子可積分系である事に大きく依存しており、この方法論の一般模型への適応は多大な困難が待ち受けていると思われる。しかし、その困難に立ち向かうに値する可能性を秘めている。
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Research Products
(1 results)