2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J08121
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金田 淳子 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | マンガ / 同人誌 / おたく / 文化社会学 / サブカルチャー / ファンカルチャー |
Research Abstract |
今年度は、マンガ同人誌の担い手のアイデンティティ構築について考察するための基礎作業として、(1)1980年代以降のマスメディアにおける、マンガ同人誌と「おたく」についての言説の分析、(2)現在のマンガ同人誌のアマチュアイベントの組織、について調査・研究を行った。その結果、以下のことが明らかになった。 まず(1)では、1989年を境にマンガのファンをバッシングする言説が現われ、これに対抗してマンガのファンを擁護する言説も現われたが、両者はともに「おたく」というラベリングを使用したため、「おたく」というカテゴリーが自明視されるようになったこと。「おたく」擁護の言説として、90年代初頭から「マンガやアニメは有望なビジネスだ」という善説が現われていたが、90年代半ば以降は「マンガやアニメは外国に誇れる日本文化だ」という言説も現われ、ナショナリズムと通底するようになったこと。またマスメディアにおいて「おたく」とは「男性おたく」を指しており、言説の発信者もほぼ男性で占められていること、などが明らかになった。この知見をもとに、平成15年度はマンガファンの当事者たちが当事者に向けて語る言説に照準し、1980年代以降のマンガファン雑誌の調査を続行する予定である。 また(2)では、現在のマンガ同人誌のアマチュアイベントについて、男性向けジャンルと女性向けジャンルを比べると、イベントの組織に違いがあることが明らかになった。すなわち男性向けジャンルの即売会は、継続性を前提に専門的なイベンターによって運営されており、即売会相互の連携もあるが、女性向けジャンルの即売会は一回限りのものが多い。換言すれば、同人誌の生産・流通における役割分担が男性向けジャンルでより進行しているということになる。平成15年度は、このことと、男性向け・女性向け各ジャンルの作品内容・担い手の意識との関連について考察する。
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Research Products
(1 results)