2002 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J08223
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河野 真太郎 東京大学, 大学院・人文社会系研究科・日本学術振興会特別研究員(DC2)
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Keywords | 文学 / イギリス / モダニズム / ヴァージニア・ウルフ / フェミニズム / 歴史 |
Research Abstract |
ヴァージニア・ウルフの作品『幕間』(Between the Acts)を主題とする研究を行い、「歴史記述の袋小路-ヴァージニア・ウルフ『幕間』における無時間性と先史」と題して日本ヴァージニア・ウルフ協会第22回大会(2002年10月19日、於和洋女子大学)において口頭発表を行なった。 『幕間』は『オーランドー』風の、戯画化された歴史を、ラ・トロウブのパジェントという形で書きこんだものといえるが、研究の結果、このパジェントというパフォーマンスが、ひとつには英国の人類学者であり、ウルフ自身この作品を書く前に読んでいたジェーン・ハリソン(特にその作品『古代芸術と祭式』)の影響、もう一方ではパフォーマンスを政治的なスペクタクルとして利用していたファシズムと、それに対抗せんとした人民戦線という歴史的文脈が重要であることが判明した。ジェーン・ハリソンが、近代的な芸術がそもそも「ドローメノン」と呼ばれる祭式から起こったものである、という一種の疎外論を展開したとすれば、人民戦線も芸術を政治的動員に利用したファシズムに対抗し、芸術の社会的機能を取りもどそうとする疎外論を基礎としていた。『幕間』がこのような二種類の疎外論との緊張関係のなかにあることを考慮すると、とくに80年代のウルフ批評、それもフェミニズム批評において、権力の外部性としての「女性」が、ジェーン・ハリソンとの関係で論じられることが多かったことは興味深い。 本発表は現在、論文にまとめる途上にあり、来年度には公表する予定である。
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