2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
02J08223
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
河野 真太郎 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | Virginia Woolf / ヴァージニア・ウルフ / モダニズム / イギリス |
Research Abstract |
英国モダニズム小説家、ヴァージニア・ウルフの研究を行った。これまでのウルフ研究・批評では、美学的・手法に関する批評、伝記的事実や歴史的事実に重点をおく批評、フェミニズム批評などの批評傾向が大勢を占めてきた。また、より広く文学批評理論においては、実証主義的歴史観やマルクス主義的歴史観が疑問に付され、空洞化の時期を経て、1990年代以降新歴史主義といった形での「歴史」の再検討が進んでいる。私の研究の目的は、批評理論における歴史にまつわる最新理論を研究・検討しつつ、ウルフの作品群とその後のウルフ批評におけるフェミニズム的主張・読解を歴史記述・歴史表象の技法の観点から再検討することであった。 当該年度においては、まずウルフに限らずモダニズム文学一般の研究という観点から、ジョセフ・コンラッドの『闇の奥Heart of Darkness』の研究を行い、論文化した。モダニズムの端緒にあるといってよいこの作品が、現実=歴史の表象という意味において、いかに現象学的洗練を行ったのかという点を、同様のモチーフをもつSF小説『結晶世界』との比較によって示した。 引きつづいて、ウルフの作品『幕間Between the Acts』を対象に研究を行った。『幕間』は第二次世界大戦直前を舞台とする作品であるが、一見してウルフの他のエッセイ、特に『三ギニーThree Guineas』で表されている、反戦主義とフェミニズムを読みとることが難しい作品である。それにもかかわらずそのような視点からの読解はこれまでに多く為されているので、それら先行研究を検討した上で、『幕間』をより広い文化のコンテクストにおいて新たな読みを提示し、論文化した。 またウルフの『波The Waves』研究も行った。この作品はウルフの作品のなかでもそのモダニズム的・実験的手法が最高潮に達した作品とされているが、本研究ではそれを1930年代という時代の文脈に置いて、いかにこの作品が当時勃興していたファシズム、英国国内のナショナリズムといった政治的・文化的圧力に応じるものであったのかという点を、先行研究を批判的に検証しながら研究した。これは論文化されてはいないが、2003年11月に九州大学で行われた日本ヴァージニア・ウルフ協会大会シンポジウムで口頭発表した。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 河野 真太郎: "『闇の奥』と『結晶世界』-地政学的考察"New Perspective. 175. 4-13 (2002)
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[Publications] Kono, Shintaro: "Prehistory, Community, and Femininity : A Reflection on the Pacifist-Feminist Reading of Between the Acts"Reading. 24. 192-205 (2003)