2002 Fiscal Year Annual Research Report
世代間倫理を組み込んだ規範理論の可能性:環境倫理の展開のために
Project/Area Number |
02J08263
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
池田 和弘 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 世代間倫理 |
Research Abstract |
本研究は、現代社会が抱える地球環境問題を見据えて、以前に発表した論文で論じた世代間倫理の議論を拡張し、時間性=歴史性を含めた規範理論の論理的な可能性、社会的な妥当性、実践的な実行可能性の是非を問うものである。本年度は、人間が生態系に内在する社会の中で生を営んでいることを踏まえ、生態系、時間、社会、他者などの基本的な概念の交通整理をし、世代間倫理を思考可能な形に鍛え上げ、相互の関係を明らかにすることをその目的とした。研究の際に、多数の書籍とコンピュータ備品の購入に科学研究費補助金を使用させていただいた。 研究の結果、世代間倫理を他者への行為と責任を軸に論理的に組み立てると、その論理は現在世代の倫理的な行為と未来世代の存在との間で前提循環が発生することを発見した。具体的には次の通りである。一方において、未来世代が存在する(という想定)が現在世代の倫理的な行為を要請するという意味で、未来世代の存在が現在世代の倫理的な行為の意味論的な原因になる。他方において、現在世代の倫理的な行為が未来世代の存在を創り出すという意味で、現在世代の行為が未来世代の存在論的な原因になる。それゆえ、世代間倫理は、未来世代の存在と現在世代の倫理的な行為との間で前提循環が生じることでひとつの円環を発動させることとなる。 この研究の成果は、先に開かれた日本社会学会第75回大会で、「世代間倫理の論理構成」という題で報告をした。その際に、国内旅費として科学研究費補助金を使用させていただいた。また、研究の成果をより広く江湖に問うために、「世代間倫理の論理構成-環境倫理の生成をめざして」という題で社会学系学術雑誌『ソシオロゴス』に現在投稿中である。その際の投稿費の一部に、科学研究費補助金を使用させていただいた。
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